“貯金”した時間だけ、雑用を肩代わりしてもらう
そんなイタリア女性たちは当然、時間が足りない。そこで最近話題になっているのが「BANCA DEL TEMPO(以下、BDT=時間の銀行)」。その名の通り、自分のフリータイムを“貯金”しておいて、忙しいときにそれを使うという“時間の貸し借り”をするシステムだ。
イタリア各地にこの組織はあり、メンバー登録をして時間が空いている時間に他のメンバーのために家事の代行、植物や動物の世話、ベビーシッターなどの仕事をする代わりに、自分が働いた分の時間だけ他人に雑用を肩代わりしてもらうという仕組みだ。自分ができること、またはやってほしいことはオンライン上の掲示板を通じて情報を交換する(例えば「繕いものします」、「壊れた家電を直してください」等々)。“交換”は仕事内容や仕事をした人の社会的地位に関係なく、単純にその労働に費やした時間で計算される。
実は「BDT」が生まれたのは1980年代後半で、もともとは奉仕を交換することで人間同士が助け合うことを目的としたボランティア活動だったのだが、この不況を反映して、時間のないワーキングウーマンたちから一気に注目が集まっている。
イタリアではベビーシッターや掃除人を利用することはごく一般的だが、実際のところ費用のほうはなかなか馬鹿にならない。そこで彼女たちは効率的なこのサービスに目をつけ、労働を交換することで金銭的な負担を増やすことなく、時間がないときのピンチを切り抜けるというわけだ。ゆえにメンバーの70%は女性で、キャリア世代が中心だとか。強くたくましく抜け目のないイタリア女性ならでは。ちなみにイタリアにも「Il tempo e’ denaro(時は金なり)」ということわざは存在する。