民主党の小沢一郎幹事長が自身の健康不安に関する発言を繰り返している。政治家のこうした発言は異例だが、小沢氏の場合は過去にも進退が取りざたされるなど苦境に立たされたとき、自ら言及する傾向があった。剛腕と称される強気のかげで弱みもみせる複雑さが、党内を掌握する小沢氏の強さを支えているようだ。【須藤孝】
小沢氏は24日、広島市で「私もそう長くない」と発言。25日の記者会見では、自らの資金管理団体による土地購入を巡る事件で、土地代金の原資が家族名義だった理由を問われ「私は平成3年(91年)に心臓病で入院した。人生というか命というか、万が一の時にも、という意識があった」と語った。
小沢氏の健康問題が明るみに出たのは、東京都議選の敗北で責任をとって自民党幹事長を辞任した約2カ月後の91年6月、心臓病で倒れて42日間入院してからだ。
06年9月に党大会直後に検査入院した際には、記者団に「心臓だけのCT(コンピューター断層撮影)をした」とあからさまに心臓に不安があったことを明かしている。
24、25の連日の健康不安発言について、小沢氏周辺は「26日も本人と電話したが、いたって元気だ。マスコミに低姿勢をアピールする戦略だ」と強調する。しかし、健康不安説が流れているわけでもないのに自らしばしば体調に言及するのは、マスコミ対策という表面的な意味だけではない。政治家にとって最大の弱みをためらわず口にすることで、逆に周囲に権力に固執しないとの「すごみ」をきかせる効果を発揮している。
小沢氏が突然、甲状腺がんの手術体験を明かしたのは07年秋の大連立騒動の直後。08年1月には今回と同じ「(先が)長くない」という発言をしている。
小沢氏に近い議員らは、今回の土地購入事件を巡り同氏の幹事長続投を前提にする一方、「続投に固執することが参院選勝利にマイナスと考えればすぐに決断する」という見方も共有している。小沢氏の発言は「いざとなれば決断してくれる」という期待を党内に抱かせ、表向きの不平不満が出ない理由にもなっている。
毎日新聞 2010年1月26日 23時39分