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きょうの社説 2010年1月26日
◎能登の「食の挑戦」 金沢が支える仕組みづくりを
能登で広がる意欲的な「食の挑戦」を、北陸最大の消費地である金沢が後押しする取り
組みをさらに広げたい。金沢市の県産業展示館で開かれた「全国丼サミットいしかわ」では、全国各地のご当地丼と比べても、ひけをとらない能登丼の魅力があらためて証明された。軌道に乗ってきた能登丼も、金沢で広く受け入れられてこそ全国区の道が開けてくるだろう。夜の片町では、珠洲の天然塩を使った「しおカクテル」などのアルコール類が話題を呼 んでいる。近江町いちば館では、能登の山海の幸や珍味を並べたアンテナ店も出店した。昨年からは奥能登の農産物を金沢市中央卸売市場に運ぶトラック便も運行され、能登と消費地金沢をつなぐパイプが徐々に太くなってきた。生産者側がつくるだけでなく、販路開拓の糸口を金沢で見いだそうとする積極的な動きが広がってきたのは心強い。 生産者にとって金沢は消費動向を探る最も身近な市場といえ、能登と金沢が距離を縮め るアイデアは他にもたくさんあるはずだ。都市と農村の交流が言われて久しいが、県内では金沢との結びつきを強固にすることが先決である。互いの地域が食を通じて豊かになれる仕組みを構築していきたい。 奥能登2市2町で2007年から始まった能登丼は、各店が多彩なメニューを競ってい るのが特徴である。「全国丼サミット」のような場で自慢の丼を持ち寄れば、能登丼の発信効果は格段に増す。金沢で行われるイベントなどで、再びそろい踏みを計画してよいだろう。 近江町いちば館開館を機に、能登の食を扱うスペースが増えた。市場は「市民の台所」 であると同時に、石川の食の発信拠点としての役割も担う。いちば館ではテレビ会議システムを活用し、能登の生産者が買い物客に商品を売り込む実験も行われた。生産者と消費者の顔が見える関係づくりは地産地消の大きなかぎを握る。 能登に限らず、県内各地の食の挑戦はそれぞれ地域おこしをかけた真剣な取り組みであ る。そのエネルギーを金沢の消費市場とうまく連動させ、ふるさとの食文化を豊かにする力に変えていきたい。
◎食の安全で日中合意案 実効性にぬぐえぬ不安
輸出入食品の安全確保に関する日中両政府の合意案が明らかになった。問題が起きた場
合、製造施設への立ち入り検査を相互に認める点が大きなポイントである。正式に調印されれば、ギョーザ中毒事件で日本の消費者にまった中国産食品に対する不信感の解消に役立つが、ギョーザ事件が発覚から2年たっても解決しない状況をみると、取り決めの実効性がどこまで確保されるか不安もぬぐえない。立ち入り検査の実施も中国側の同意の取り付けが課題であり、中国政府の誠実な取り組みを求めたい。ギョーザ事件について、日本政府は前政権時代から捜査の中間報告を出すよう求めてお り、岡田克也外相も早急に報告するよう要求した。少なくとも毒物が混入したのは中国と特定する必要があるとの判断からである。しかし、中国側は要求に応えるふうではなく、捜査を実質的に指揮してきた中国公安省幹部の異動や捜査態勢の大幅縮小が伝えられる。 ギョーザ事件で中国捜査当局は元従業員数人を拘束したものの、容疑を否認し、真相解 明は難航している。今回の輸出入食品に関する政府間合意で、ギョーザ事件の幕引きが図られるようなことがあってはならない。 合意案では、問題が発生した食品メーカーへの立ち入り検査のほか、健康被害の実態、 製造元、流通経路などの情報をまず速やかに提供することとし、協力の進ちょく状況を評価する閣僚級の定期協議を毎年1回開催する。 また、食品だけでなく添加物や包装・容器さらに乳幼児用のおもちゃも対象に含める。 米国で販売された中国製の子供用アクセサリーから有害物質のカドミウムが検出され、消費者庁も調査に動いているところだけに、おもちゃを含めるのは妥当な措置である。 しかし、日中の合意案は、モデルとした米中の取り決めのように「相手国への連絡は問 題発生から2日以内に行い、問い合わせには5日以内に回答する」といった期限が盛り込まれておらず、対策が後手に回る懸念もある。内容をさらに改善してもらいたい。
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