民主党政権の誕生で、日本の防衛産業はどのような影響を受けるのだろうか。
防衛技術は日本の航空機産業のけん引役だった。ただ、20年に及び、防衛装備品の調達予算はじり貧が続いてきた。防衛省は防衛庁時代を含めて、国産技術の確立を優先してきたが、最近では予算削減の圧力のほか、守屋武昌・元次官の汚職事件もあり、防衛産業とは距離を置いているようだ。
防衛産業からは将来を危惧する声が高まっている。今年はほぼ20年ぶりに、戦闘機選定もあるだけに、防衛省の動きが注目を集めそうだ。
現在の防衛省の装備品調達戦略などの姿勢を厳しく批判してきたのが軍事ジャーナリストの清谷信一氏だ。清谷氏は世界的な権威がある英軍事誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウイークリー」の日本特派員を務めたほか、現在はカナダの民間軍事研究機関(漢和情報センター)の上級アドバイザーでもある。屈指の論客である清谷氏に防衛省に鋭く切り込んでもらった。
戦闘機の選定遅れで、倒産ラッシュ
―― まず、防衛省による次期主力戦闘機(FX)の選定が2年も遅れています。この問題についてどう見ていますか。
清谷 FXの選定をこれほど引っ張ってきたことは問題です。防衛産業の崩壊につながるのではないでしょうか。
中小の部品メーカーでは倒産が続出してもおかしくない。最初にライセンス国産で行くのか、輸入で行くのか、その姿勢を最初に示さないと。それこそ決定する5年ぐらい前に明らかにしておかないと、戦闘機に依存してきた部品メーカーは死活問題です。
待たされるだけで、突然ライセンス国産がなくなったりしたら、どうやって仕事を探すのですか。
―― 防衛省はレーダーに捕縛されにくいステルス機の調達を最優先に考えているようですが。
ロッキードの「F22」をどうしても欲しかった。だが、それは米国政府が輸出すら認めなかった。それはしょうがないのですが、次は同じロッキードのステルス機である「F35」でしょう。
そもそも、F22 とF35は同じステルス機でも全く用途が違いますよ。「スポーツカー(F22)がだめなら、ダンプ(F35)を買う」というようなものです。F35は「空対空」ではなく、「空対地」の攻撃機です。だから、ミサイルも国産なら2つしか搭載できない。
日本に求められているのは東アジアで相手国がたくさんの戦闘機で攻めてきた場合の防衛でしょう。だから、ミサイルをたくさん積めなくて、どうするのですか。
―― 三菱重工の戦闘機「F2」も2011年度で生産が終わってしまいます。