「Last Chance ――航空機産業の活路」

Last Chance ――航空機産業の活路

2010年1月27日(水)

スポーツカーが買えないとダンプを買うのか

軍事ジャーナリスト、清谷信一氏が防衛省の無策に活

3/4ページ

印刷ページ

 戦闘用ヘリである「アパッチ・ロングボウ」はそもそも、62機の調達が計画されていましたが、これが10機になってしまった。これは防衛省への産業界の不信感を強めています。

 契約書に明記されていないと言っても、長年慣行として、調達の予定機数はほぼ守ってきたわけですから。62機から10機というのはあまりにもひどすぎる。富士重もそうですが、アパッチの部品メーカーの経営が心配です。

 ―― しかし、なぜこんなに減ったのでしょうか。

 専守防衛の日本で、世界最強と言われてきた戦闘ヘリが62機も必要だったのかということです。米国と同じおもちゃが欲しかっただけではないでしょうか。

 防衛省の調達政策というのは「どんぶり勘定」が多い。最初から、調達機数と予算規模を明示してやらないといけないのに。そこをあいまいにして、だらだら調達していくから、コストが膨れ上がってしまう。

 アパッチはその象徴的な事例でしょう。結局は10機でやめてしまいましたが。

防衛省の調達改革に喜ぶ欧米大手

 ―― 防衛省はこれまで主要装備のライセンス国産で必要な初期費用(ライセンス料などを含めた初度費)をメーカーに負担させてきました。だが、アパッチ問題もあり、初度費を計上すると言っています。

 防衛省はこれまで付け払いのようなことばかりやってきました。だが、初度費を計上するようになると、ライセンス国産に二の足を踏むのではないでしょうか。欧米の外資系防衛産業大手は喜んでいますよ。これで完成機の輸出がやりやすくなると。

 ―― 輸入が中心になると、国内の防衛産業大手は厳しいですね。

 民間の防衛産業大手はやる気を失うでしょう。研究開発も崩壊しかねない。将来の調達を前提に、防衛省に次世代装備品の開発で協力しているのですから。民間が開発費をかなり負担してきました。こうした関係が崩れていくでしょう。








Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント0件受付中
トラックバック


このコラムについて

Last Chance ――航空機産業の活路

日本はこれまで何度も世界の航空機市場に挑みながら、挫折と屈辱を味わってきた。中国など新興国が台頭し、世界競争が一段と激化していく中で、二度と失敗は許されない。「最後のチャンス」に賭ける、日本の航空機産業の戦いを報告する。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

日経ビジネスからのご案内