戦闘用ヘリである「アパッチ・ロングボウ」はそもそも、62機の調達が計画されていましたが、これが10機になってしまった。これは防衛省への産業界の不信感を強めています。
契約書に明記されていないと言っても、長年慣行として、調達の予定機数はほぼ守ってきたわけですから。62機から10機というのはあまりにもひどすぎる。富士重もそうですが、アパッチの部品メーカーの経営が心配です。
―― しかし、なぜこんなに減ったのでしょうか。
専守防衛の日本で、世界最強と言われてきた戦闘ヘリが62機も必要だったのかということです。米国と同じおもちゃが欲しかっただけではないでしょうか。
防衛省の調達政策というのは「どんぶり勘定」が多い。最初から、調達機数と予算規模を明示してやらないといけないのに。そこをあいまいにして、だらだら調達していくから、コストが膨れ上がってしまう。
アパッチはその象徴的な事例でしょう。結局は10機でやめてしまいましたが。
防衛省の調達改革に喜ぶ欧米大手
―― 防衛省はこれまで主要装備のライセンス国産で必要な初期費用(ライセンス料などを含めた初度費)をメーカーに負担させてきました。だが、アパッチ問題もあり、初度費を計上すると言っています。
防衛省はこれまで付け払いのようなことばかりやってきました。だが、初度費を計上するようになると、ライセンス国産に二の足を踏むのではないでしょうか。欧米の外資系防衛産業大手は喜んでいますよ。これで完成機の輸出がやりやすくなると。
―― 輸入が中心になると、国内の防衛産業大手は厳しいですね。
民間の防衛産業大手はやる気を失うでしょう。研究開発も崩壊しかねない。将来の調達を前提に、防衛省に次世代装備品の開発で協力しているのですから。民間が開発費をかなり負担してきました。こうした関係が崩れていくでしょう。