<< 2010年01月 >>
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

園部元最高裁判事、外国人参政権付与容認論の重視は「俗論」

2010/01/26 16:53

 

 

 月刊「WiLL」3月号を手に取ったところ、日大の百地章教授の論文「提唱者までが否定した外国人参政権」が目を引きました。特に関心を覚えたのは、その中で、平成7年の最高裁第3小法廷判決に加わった園部逸夫元判事の論考が紹介されていた部分です。この園部氏は小泉内閣時代の皇室典範有識者のメンバーとして、女系天皇容認論を推進した人であり、私も以前、取材したことがあります。まあ、なんというか、いやまあしかし、とにもかくにくも、という印象を持っています。

 

 また、永住外国人への地方参政権付与問題に関しては、平成11年6月24日付朝日新聞に、次のような回想文を寄せています。

 

 《私のいた最高裁第三小法廷は九五年二月、五人の全員一致の意見で、「地方公共団体の長や議員の選挙で、定住外国人に選挙権を与えることは憲法上禁止されていない」という判断をした。

 在日の人たちの中には、戦争中に強制連行され、帰りたくても祖国に帰れない人が大勢いる。「帰化すればいい」という人もいるが、無理やり日本に連れてこられた人たちには厳しい言葉である。国会でも在日の人たちに地方参政権を与えたらどうかという意見が出ているが、ようやくこの問題をゆっくり認識する時間が出てきたという気がしている。

 裁判所としては、すでに政府間の取り決めで決まった補償の問題を覆すところまで積極的な政策決定はできないという限界がある。しかし、傍論で政府や立法による機敏な対応への期待を述べることはできる

 

 …この判決は、主文で「選挙権は、主権者たる国民のみに与えられたのであり、権利の性質上も外国人には認められない」「国と地方公共団体は不可分一体の関係にあり、切り離すことはできない」「(憲法93条2項のいう「住民」は)日本国民を意味するもの」などと述べています。つまり、外国人参政権は地方レベルであっても憲法違反だと読めます。

 

 ところが、園部氏が回想しているように、「傍論」部分では主文と矛盾するような「立法への期待」を示しているわけです。外国人参政権付与賛成派の政治家やメディアはみんな、この「傍論」を根拠にし、その主張を展開していると言えます。園部氏らの思うつぼというところでしょうか。

 

 で、ここからが興味深いところですが、百地氏は「WiLL」の論文にこう書いていました。つまり、園部氏は宗旨替えしたということでしょうか…。

 

 《非常に重要な点は、判決に加わった園部逸夫元最高裁判事が、最近になってこの「傍論」を重視することは、「主観的な批評に過ぎず、判例の評価という点では、法の世界から離れた俗論である」と批判していることである。(中略)最高裁の「傍論」で部分的許容説を主導したと思われる園部逸夫元判事まで、部分的許容説に対して、現在では批判的な見解を示していることになる》

 

 うん、面白い。そこで私、百地氏が園部氏の文章を引用した『自治体法務研究2007・夏』というあまりメジャーでない雑誌を国会図書館に行って閲覧、コピーし、原文にあたってみました。朝日の記事から8年後に書かれたもので、「私が最高裁判所で出合った事件」というタイトルの連載の最終回「判例による法令の解釈と適用」という4ページほどの論文のごく一部分でした。ちょっと長いですが紹介します。

 

 《(3)定住外国人の選挙権に関する訴訟 この事件の判決は、3つの項目に分かれている。第一は、憲法93条は在留外国人に選挙権を保障したものではないこと。第二は、在留外国人の永住者であって、その居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至った者に対して、選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されていないがそれは国の立法政策にかかわる事柄、措置を講じないからといって違憲の問題は生じないこと。第三は、選挙権を日本国民たる住民に限るものとした地方自治法11条、18条、公職選挙法9条2項の規定は違憲ではないとの判断が示されたことである。

 判例集は、第三の部分を判例とし、第一と第二は判例の先例法理を導くための理由付けに過ぎない。第一、第二とも裁判官全員一致の理由であるが、先例法理ではない。第一を先例法理としたり、あるいは第二を傍論又は小数意見としたり、あるいは第二を重視したりするのは、主観的な批評に過ぎず、判例の評価という点では、法の世界から離れた俗論である。》

 

 法律家の文章は分かりにくいところがありますが、朝日の回想文で述べていることと微妙に変わってきているように読めますね。朝日では、外国人への選挙権付与は憲法上禁止されていないという判断を下したことを誇らしく書いているのに、8年後の論考では、「措置を講じないからといって違憲の問題は生じない」ことを強調している印象があります。

 

 また、かつての憲法判断に関する「傍論」との位置づけには反論していますが、これも朝日で傍論の効用を主張していたことと食い違うような気がします。さらに、百地氏が引用している通り、この判断を重視することは「主観的な批評」「俗論」だとまで断じています。

 

 これは、一体何なんでしょうね。かつての自分たちの判断について、だんだんと「アレはまずかった」「ちょっと違ったかも」と思うようになって修正を試みているのか、それとも私の読解力が足りずに真意を誤解しているのか。

 

 百地氏の論文にはまた、ドイツにおける「部分許容説」をわが国に初めて紹介し、参政権付与派の論文にも引用されている憲法学者の長尾一紘中央大教授が、現在では明確に「外国人への参政権付与は地方レベルでも違憲である」とする立場を取っていることなども書かれており、読み応えがありました。まあ、人生いろいろですね。

 

カテゴリ: 政治も  > 政局    フォルダ: 指定なし

コメント(19)  |  トラックバック(0)

 
このブログエントリのトラックバック用URL:

http://abirur.iza.ne.jp/blog/trackback/1432111

コメント(19)

コメントを書く場合はログインしてください。

 

2010/01/26 17:13

Commented by iza-sam さん

<外国人参政権付与>
賛成:民主党社民党、共産党、公明党など朝日新聞(リベラル)派
反対:自民党、改革クラブ、みんなの党、国民新党など産経新聞(保守)派
2010参院選の争点だ。

 
 

2010/01/26 17:27

Commented by 阿比留瑠比 さん

iza-sam様
 >2010参院選の争点だ。…争点になる前に成立してしまわないようにしていかなければなりませんね。

 
 

2010/01/26 17:42

Commented by bunkyo-ku さん

『外国人が日本の政治、外交、防衛、教育に口出しをすることはおかしい』と思うのが普通の日本人の素朴な感覚ではないでしょうか。

外国人に選挙権を付与する法案には絶対反対。辛抱強く街宣を続けよう。

 
 

2010/01/26 17:48

Commented by 阿比留瑠比 さん

bunkyo-ku様
 >普通の日本人の素朴な感覚…。うーん、私は自分自身の感覚は持っていますが、普通の日本人がどう感じるかを理解する自信はないのです。世論調査結果を見るたびに自分の感覚のズレを感じていますし。

 
 

2010/01/26 17:50

Commented by iza6773 さん

日本国の選挙に異民族が選挙する事は違憲に決まっているし、国会よりも憲法違反を裁判所が発信すべき!
★女系天皇も発案自体がおかしい。 男女平等と唱えるのは結構だが、お互いに違う物もあると言う事を認めないと。 では何故これまで皇紀2670年間続いて来たのか。 男子の遺伝子は【エックス+ワイ】を持ち、女子の遺伝子は【エックス】。すなわち、Y遺伝子が無いのである。 日本民族が団結出来るのは、皇室があるからで、中国・朝鮮はその【解体を狙う】。
★.男女平等と叫ぶ女性陣の嘘----船が沈没寸前になると決まって【女・子供を優先しろ】。 

 
 

2010/01/26 18:08

Commented by RAM さん

阿比留様、
totoさんが、現憲法GHQ草案(英文)まで読み解かれて考察されておられます。
http://toto-bunko.iza.ne.jp/blog/entry/1410669/
原文であるものを読めば、基本に戻れ、分かりやすいと思われます。

 
 

2010/01/26 18:18

Commented by kumatarou さん

阿比留様、お疲れ様です。

>世論調査結果を見るたびに自分の感覚のズレを感じていますし。

国民の政治への関心が薄いだけで、ズレているわけではないと思います。産経新聞を手にする人が増えれば、少しは変わるかもしれませんね。

長尾一紘中央大教授は部分的許容説を修正する論文を発表するとのことで、少しはいい方に進んでいると思います。楽観しすぎているかもしれませんが。

 
 

2010/01/26 18:19

Commented by 阿比留瑠比 さん

iza6773様
 韓国では公選法で外国人による選挙活動が禁止されているそうですから、皮肉なものですね。

 
 

2010/01/26 18:19

Commented by 阿比留瑠比 さん

RAM様
 参考にさせていただきます。

 
 

2010/01/26 18:20

Commented by 阿比留瑠比 さん

kumatarou様
 まあ、悲観も楽観もせずに、こつこつと…。

 
 

2010/01/26 18:25

Commented by fa-eng さん

To 阿比留瑠比さん
> iza6773様
> 韓国では公選法で外国人による選挙活動が禁止されているそうですから、皮肉なものですね。

日本の公選法も禁じていませんでしたか?
だとしたら韓国政府までもが参政権云々を言うのは重大な内政干渉では?

毅然と対応しなかった前自民党内閣も問題ですが、ソレを受け入れる無能な左翼内閣も大いに問題でしょう。

 
 

2010/01/26 18:29

Commented by 阿比留瑠比 さん

fa-eng様
 日本は確か明文的に禁止したものはなかったのではないかと思います。

 
 

2010/01/26 18:38

Commented by nihonhanihon さん

阿比留さん

そもそも前提条件の
>帰りたくても祖国に帰れない人が大勢
というのが2010年の状況ではどうなのでしょうね?

変に混乱している一部の人に返事されたくもないので
今回のコメントはこの程度にしようかなとは思っていますが。

 
 

2010/01/26 18:42

Commented by 阿比留瑠比 さん

nihonhanihon様
 園部氏らの思い込みも多分に反映されているのでしょうが、そこがこのエントリのメインの論点ではないので…。

 
 

2010/01/26 18:45

Commented by toto さん

阿比留様。こんにちは。
お疲れ様です。

RAMさんにご紹介いただきましたが、
問題となる「住民」の部分ですが、日本国憲法の英文では…。
shall be elected by direct popular vote within their several communities.
「いくつかのコミュニティ内での直接選挙によって選出されるものとする。」
…となっています。
つまり「住民」という文言は、国際社会に公表されている憲法の英文訳にはなく、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員を、誰が決めるのかはその前述の15条1項に記される「国民」になると思います。(普通に読めば)

法的なことは詳しくはありませんが、拡大解釈をすることで、日本文と英文訳とで辻褄が合わなくなる場合には、どうなるのでしょうか?
詳しい方が居られましたら、ご教示いただければ幸いです。

 
 

2010/01/26 19:55

Commented by weirdo31 さん

>選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されていないが、それは国の立法政策にかかわる事柄、措置を講じないからといって違憲の問題は生じないこと。<

憲法第15条第1項で、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と明示されているとおり、国民固有の権利です。

したがって、問題は国民とはということになりますが、同じ憲法第3章第10条に日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」とありますので、国籍法を改正するすることで、この問題は解決するわけです。

しかし、あくまで自国籍に固執する外国人を日本国民と見なせるのかという問題と、当然のことですが、いったん事があれば日本に忠誠を誓えるのかという問題があります。戦後65年経とうとしていますが、この点もなおざりに出来ません。これは現在の日本国民に対しても鋭く問われなければならい事ですが。

 
 

2010/01/26 20:25

Commented by 花うさぎ さん

阿比留さん

モロにエントリーが合いましたね(^^)。

>かつての自分たちの判断について、だんだんと「アレはまずかった」「ちょっと違ったかも」と思うようになって修正を試みているのか

あの時は勢いで自分の気持ちを書いてしまったけど、その後の展開を見ているとこれはまずい、と修正したのでしょう。

つまらん傍論など書かなければこれほどの事態を招かなかったのに、万死に値すると思います。

 
 

2010/01/26 20:45

Commented by s05694 さん

前のスレッドで、小沢に対しては、贈収賄を適用すべきと書きましたが、当然ながら偽証罪はもとより、政党交付金を横領しているのですから、横領または詐欺罪も適用可能です。

あだ名の壊し屋というのは、何のことはない政党を壊してついでに金儲けし、日本の保守を壊し、日本の国体を壊して外国から利益供与を受けるという剛腕ではなく強欲ということ。なんら建設的な創造を行わない。民主主義が聞いてあきれる自己中心の権力願望、小沢ファッショのなのです。

小沢の危険性については、各メディアも認識して非難していますが、鳩山民主党についてはまだまだ認識が甘いようです。民主党もいかに欺瞞に満ちていることか。今国会で、マニフェストになかった「外国人(国籍をもたない永住者の)参政権法案」を成立させようとしているのはなにごとでしょうか。

先の衆院選で民意を問うてはいないではないですか。「衆院選で民団(在日大韓民国民団)にお世話になったご恩返し」と「参院選で民主党の完全勝利を期するため」に国の在り方を左右する重要法案を、選挙目当てで成立させようとはまさに亡国、売国奴の政党と言わざるを得ません。

以下は、外国人参政権を導入したオランダの悲惨な実態を目の当たりにされた話の引用です。。

オランダでは20年以上前、イスラム系の外国人に地方参政権を付与した。1600万人の総人口に対して、20年前は約5万人だったイスラム移民が、今では、20倍の100万人を超えている。

イスラム自治区では、参政権を得たイスラム系移民たちが、寛容で自由な(同性愛も大麻も合法)オランダ文化を憎悪し、「早く俺たちの政党をつくり、オランダを変革する」という使命感を本気で持ち、外国人が国の基本的な在り方を変えようとしている。外国人参政権の付与は「国家の自殺」である。


日本が真の国際化を遂げるには、いずれ優秀な移民の受け入れが必要な時がくるでありましょうが、その前に、日本と日本人の権利を守る制度を整備すべきです。小生案として5つの条件を以前スレッドに記載しましたが、参政権は基本的に帰化を前提とし、日本国への忠誠を誓い、署名することとすることをもって帰化の第一番目の条件とすることを、再掲しておきます。

 
 

2010/01/26 21:02

Commented by izagami さん

阿比留様
皆さんはご存知で、知らないのは小生だけかもしれませんが、先日、「外国人地方参政権法案」などを包括した、外国人優遇優先の「外国人住民基本法」なるものを円より子が準備している、という話を小耳にはさみました。ものすごく、外人優先で、日本人は隅に追いやられる法案らしいのです。こんなのが、実際に動いているのでしょうか。。お教えいただきたくよろしくお願い致します。

 
 
トラックバック(0)