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キン肉マン:超人募集のはがきで「アパートの床が抜けた」 ゆでたまご・嶋田隆司さん語る

「キン肉マン」を語る「ゆでたまご」の嶋田隆司さん
「キン肉マン」を語る「ゆでたまご」の嶋田隆司さん

 80年代に大ヒットしたマンガ「キン肉マン」。アニメ化され、キャラクターの消しゴム「キンケシ」が社会的なブームになり、連載から30年後の現在も、「キン肉マン2世」が連載されている。22年ぶりに本編のコミックス37巻が発売される「キン肉マン」の作者・ゆでたまごの嶋田隆司さんに話を聞いた。【河村成浩】

 --キン肉マンでデビューされたんですね。

 キン肉マンで78年に赤塚賞を受賞し、79年から週刊少年ジャンプで連載が始まりました。キン肉マンは、元々ウルトラマンのパロディーで、僕が小学校4年生のころに大学ノートにマンガを描いて、クラスで回覧して人気だったんですよ。そこに(ゆでたまごの)中井(義則)君が転校してきたんです。中井君は、絵がうまくて校内で張り出されるほどでしたが、僕のキン肉マンが最初に読んだマンガだったそうで、二人を結びつけたのもキン肉マンなんですよ。

--いきなりヒットしましたね。

 初期のキン肉マンは、子供のころにブタと間違えられて捨てられた正義の味方で、地球のために怪獣と真剣に戦うんだけど、なぜか周りに迷惑をかけるという内容でした。そのとき、キン肉マンがテリーマンとコンビを組んで、悪のシーク星人と(プロレスのように)戦ったときの評判が良かったんです。私も中井君もプロレス好きだったので、他の国にも超人がいるだろう……と考えて、超人たちを集結させて戦わせようと「第20回超人オリンピック編」が始まりました。それから人気にはずみがつきました。

--ファンから超人のアイデアを募集していましたね。

 昔、自分がファンレターの返事をもらってうれしかったので、連載当初はファンレターに全部返事を書いていたんです。でも数が多くて書ききれなくなって……。(アニメに登場するアナウンサーのキャラクター)「アデランス中野」のモデルになった担当の中野和雄さんから「ファンレターの返事の代わりに、キン肉マンの対戦相手を募集して、よければマンガで出してあげたら?」というアイデアが出たんです。テリーマンやウルフマンは僕たちのアイデアですが、ロビンマスクやラーメンマン、バッファローマン、アシュラマン、悪魔将軍、ネプチューンマンはファンのアイデアを元に生まれました。

--はがきに全部目を通したのですか?

 もちろんです。毎週、段ボールよりも大きな郵便局の箱にいっぱいのはがきが来るようになり、睡眠時間を削って目を通していましたよ。あまりのはがきの数に手の脂分がとんで、指先がひび割れるほどでした。当時、東京都板橋区のアパートに下宿していたのですが、はがきの重みで床が抜けてしまったんです。仕方なく安い一軒家を借りて、はがきを保管していたのですが、そこもいっぱいになってしまいました。

--ファンレターも大変だったのでは。

 キン肉マンってファンレターがこないんです。代わりに超人を書いたはがきが送られてくるんですよ。連載中の「キン肉マン2世」では、超人募集はしていないのですが、それでも多くの方から超人のアイデアを描いたはがきが送られてきますね。面白いのは、みなさん傾向と対策を練っていることです。「キューブマン」を出せばおもちゃ系の超人が来て、「ベンキマン」を出せば下ネタ系が来るとか……。

--「第20回超人オリンピック編」以後も人気はさらに伸びました。

 「第20回超人オリンピック編」の後、「アメリカ遠征編」をやっていたのですが、人気は落ち着いていました。そこで2回目の「超人オリンピック ザ・ビッグファイト編」を描くと、さらに人気が出たんです。次の「7人の悪魔超人編」では、正義超人対悪魔超人の戦いになります。純粋な悪がいなかったから、絶対的な悪との戦いを描こうとしました。そこで、超人の強さを示す数値「超人強度」を出すようにしたのですが、読者に「分かりやすい」と支持を得られました。キン肉マンは95万パワーで、バッファローマンはその10倍強いから1000万パワーという具合です。その圧倒的な敵とどう戦うかを描いたんですよ。

--「キンケシ」の人気もすごかったですね。

 近所にダイエーがあって、買い物に行ったときに子供たちが行列を作っているんです。何かと思えば、「キンケシ」を買うための列だったんです。その瞬間、背筋がぞくっとしたのを覚えています。映画館では、ざわついている子供たちが、映画が始まった瞬間、主題歌を合唱してくれて……。中井君と二人でじーんと来ましたよ。

--8年の連載が終わったときは?

 アイデアを出しつくし、描き切ったという解放感がありまた。8年間休みもなく、キン肉マンと並行して「闘将!!拉麺男(たたかえ ラーメンマン)」の連載もやっていましたから。(並行連載について)担当の中野さんから「マンガ家なら1回は通らないとあかん道や。やり遂げると何か見えるから」と言われました(笑い)。当時のジャンプは、「魁!!男塾」の宮下あきらさんや「キャプテン翼」の高橋陽一さんがいて、ちょっとでも休むと、忘れ去られてしまうという感じでした。

--11年後に息子・万太郎を主役にした「キン肉マン2世」の連載が始まります。

 雑誌「プレイボーイ」からキン肉マンを描かない?という依頼があったのですが、「キン肉マン」で勝負したくないと思ったのと、スケジュールが詰まっていたので、2度お断りしたんです。そして3度目に「キン肉マンの息子の話はどうです?」と切り出されたんです。スグル(キン肉マンのこと)はヨボヨボで、地球は危機なんだけど、息子は地球を救う気配がない……。それはジェネレーション・ギャップがあって面白いかなと思ったんですよ。そしてキン肉マンに息子がいるなら、テリーマンやロビンマスクにもいるだろう。でもラーメンマンは子供がいないだろうな……と。

--22年ぶりにコミックス「37巻」が出ます。

 キン肉マンの読み切りを描いていたら、中井君が「(キン肉マンのこれまでの読み切りを)並べ替えたら36巻の続きになる」と言ったんです。ジャンプコミックスに対する思い入れがあったし、出したら面白いんじゃない?となって、担当に相談したら決まりました。37巻に掲載されている「ウォーズマンビギンズ」ですが、読み切りのときはページ数が合わなくて減らしたのですが、コミックスはすべて載せています。また他の作品も加筆していますよ。作者の写真のカットもコミックス1巻と似せていたり、当時の写植にこだわったり、いろいろ楽しんでますのでぜひ見てください。 

2010年1月25日

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