温暖化対策をめぐる国際交渉に、徒労感を感じている人は多いだろう。昨年末の「気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」は政治合意文書さえ採択できずに終わった。次のステップに向けた道筋もいまだにあいまいだ。
しかし、ものは考えようかもしれない。肩すかしだった会議を、策を練り直す転機にもできるはずだ。
COP15の結論は「コペンハーゲン協定に留意する」という弱い表現に落ち着いた。協定の下、今月末までに、先進国は2020年までの削減数値目標を条約事務局に登録する。途上国は削減活動を登録する。
法的な拘束力がないとはいえ、米国や中国が同じ協定の下で削減努力を表明するなら、それなりの意味はある。2013年以降のポスト京都の枠組みには、2大排出国である米中の参加が欠かせないからだ。
ただし、提案内容には期待できない。米国には議会の足かせがあり、中国は自国の経済発展を優先している。中国、インドなどは、協定が求める「削減行動の国際的な検証」にさえ否定的だ。提案される削減量を足し合わせても、協定に盛り込まれた「気温上昇の2度以内の抑制」を実現できないという問題もある。
こうした状況の中で、日本はどうすべきか。
政府は中期目標として、これまで通り、「主要国の参加による、公平かつ実効性のある枠組みと意欲的な目標」を条件に、「90年比25%削減」を堅持する見通しだ。
国際的な情勢をみると、削減目標に条件を付けるのは当然だ。問題は、条件の具体的中身があいまいなことだ。高い数値目標で国際交渉をリードするというシンプルな戦略がなかなか機能しないこともわかった。
日本は、どういう条件なら25%削減を約束するのかを詰める必要がある。同時に、目標達成のための行程表を早急に描かないと、数値だけでは国内を納得させられない。
国際交渉では、「公平かつ実効性のある枠組み」のための仕組みを提案し、議論を先導することの重要性が増す。その際には、さまざまな公平性の指標を勘案し、「日本だけが損をする」という国内の懸念を払しょくする制度を編み出してほしい。
新興国支援の事業が先進国の産業も活性化させるような仕組みも課題だ。そのために、産業界自らが仕組みを提案し、議論のたたき台とすることも一つの手だ。
COP15では、全員一致による国連の合意プロセスにも疑問符が付いた。世界を先進国と途上国に二分すればよかった京都議定書の時と時代は変わった。より複雑な世界情勢に対応する知恵も求められている。
毎日新聞 2010年1月26日 東京朝刊