原爆投下直後の広島で放射性物質を含む「黒い雨」が降った地域は、国が認めた範囲よりも大幅に広いことが初めて公的な調査で裏付けられました。藤原記者の報告です。
1945年8月6日―。被爆した広島では黒く粘り気のある雨が降りました。放射性物質を含んだ「黒い雨」です。
国が認めている「黒い雨」の範囲―。赤で示したのが「大雨地域」、黄色が「小雨地域」です。大雨地域は被爆していなくても、無料の健康診断など国の援護の対象になります。
ただ、黒い雨の範囲は見直しの必要が長年指摘されていました。
「原爆投下直後の広島で降った黒い雨。今回の調査結果によりますと、黒い雨の範囲は広島市の東側を除く、ほぼ全域にわたっています」(藤原大介記者)
広島市はおととし、原爆投下前に生まれた住民およそ3万7000人を対象にアンケート調査を実施。黒い雨について回答のあった1800人余りのデータを専門家が解析しました。
「黒い雨は、広島市域の東側、北東側を除くほぼ全域と周辺部で広範囲に降った可能性が示唆されました」(広島大学原爆放射線医学研究所 大滝慈教授)
黒い雨が降った範囲は、ご覧のように赤の大雨地域、黄色の小雨地域ともに大幅に塗り替えられる可能性が出てきました。
国の援護のあり方にも影響を与えることになりそうです。
「降雨地域を拡大してほしいというようなことをですね、今からの検討に当然なっていきます。この解析結果については非常に重いものだと」(広島市原爆被害対策部 漆原正浩課長)
「水を飲んだり、野菜を食べたり、仕事をする。みな、その放射能の中で仕事をしとるわけだからね。体調崩れて早く死んだ人もだいぶおるよ」
「わたしたちももう70過ぎてるんですよ。それでね、もう時間がないんですよね。認定されますことを願っているんですけど」(「黒い雨」未認定地域の住民)
被爆によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)も明らかになりました。これまでにPTSDになったことのある人は、5%から9%にのぼり、阪神大震災やアメリカの同時多発テロとほぼ同じ水準だということです。
「初めてですね、被爆者のみなさまの精神影響の実態がですね、明らかになったというのは。非常に意義が大きいと思います」(広島大学原爆放射線医学研究所 神谷研二教授)
しかし、すでに亡くなった被爆者については反映されておらず、被害の実態はさらに深刻なものとみられます。(1/25 18:40) |