この成功本はここがミソ!
前著『28歳からのリアル』でヒットを飛ばした人生戦略会議の最新本である。内容は相変わらず辛辣で、読んだら暗くなること間違いなし。
しかし読まずにはいられないのはなぜか。年齢設定が実にリアルで、読み手の心をくすぐるからである。前著は30歳前の微妙な時期で、今回は仕事や結婚、そして家庭で大いに悩む頃である。
とくにターゲットは、団塊ジュニアで競争が激しいからなおさら、身に詰まされるのか。最近、タイトルに「28歳からの○○」とか、「33歳からの○○」のような28歳~35歳くらいの年齢層向けのタイトルがついたものが非常に増えている。
もともと、この年齢が人生の分岐点といえばそれまでなのだろうが、20歳だって、50歳だって、それぞれ人生の分岐点なはずである。でも、この年齢層が取り上げられる。実際に本も売れる。
この年代というのは、俗にいう「ロストジェネレーション」にあたる世代で、社会に出たときにはバブル崩壊、就職氷河期という割をくらわされた世代である。結局、就職から10年近く、もしくは10年以上の時期が過ぎても、将来不安にさいなまれて、こんな本が需要を生む世代になっているのだろう。
実際、経済環境や制度上の問題で割をくらった部分もあるが、今までの価値観のままでは成り立たないということに気づき始めて、将来設計を自分たちで組み換え、新しい価値観を作り始めなくてはいけないという過渡期にちょうど当たっている頃である。これが、購買力につながっている。
内容は読みやすいストーリー仕立てでもなく、淡々と示される予想された未来像と客観的なデータの羅列。これには、このままズルズルと何もしないでいると、トンでもないことになるぞという著者の辛辣な主張なのだろう。
40代で収入が頭打ち、50代では減少、しかも年金と税金の負担は大増加する。どう見ても、お先真っ暗の現実に圧倒されるのだ。
総務省の「就業構造基本調査」より作成した「30~34歳男性の年収分布」というグラフが出てくるが、1997年と2007年では、グラフの山が左に大きくずれているのがわかる。つまり、現代の30代前半男性は、10年前の同世代(現在の40代前半)よりも100万円から300万円ほど所得が減っているのだ。
ということは、現代の35歳は、世の中がどんどん貧しくなっていくことを前提に生活設計、人生設計をしていかなければならない。話は少しずれるが、現在の「婚活」ブームは、ちょうどこの年代が中心になっている。
いろいろなデータによると、半分以上の女性が結婚相手に求める年収は、600万円以上だそうだが、実体としては、彼女たちの対象になる男性は3・5%くらいしかいないのだ。
ますます暗いデータばかりだが、闘争心とファイティングポーズは捨ててはいけない。人間、やる気がなくなると、どこまでも落ち込んでしまうからだ。
実際、ホームレスと一般人のいちばんの違いは、お金や格好ではなく、やる気があるかどうか。最後は肉体ではなく、精神がすべてを左右するのである。
ただありがたいことに、この「婚活」の特殊な価値観(現実認識)のズレも、過渡期なので、あと5年~10年もすれば、このあたりのゆがんだ現状認知は、かなり修正されてくるはずだ。実際、20代前半などの若い女性の方が、男性に求める年収水準は低くなっているという。
それを聞いてちょっと安心といったところだが、そういう面からいっても、読んでおいて損はない本だといえるだろう。
次に心理カウンセラーで成功本アナリストの高橋聰典氏に本書の解説をしてもらったので、ぜひ参考にしてほしい。(次ページへ続く)