生かすも殺すも財務省次第
長谷川幸洋(東京新聞・中日新聞論説委員)
(VOICE 2010年1月20日掲載) 2010年1月25日(月)配信
1ページ中 1ページ目
前のページ | 1 | 次のページ
広がりゆく鳩山政権への深い失望
熱狂は終わった。代わって、鳩山由紀夫政権に対して深い「失望」が広がっている。
日本郵政の社長に斎藤次郎元大蔵事務次官を起用した仰天人事によって、脱官僚依存どころか、どんな天下りでも可能になってしまった。大臣官房が「それは大臣の指名です」といえば、それまでだからだ。自民党時代にも考えられなかった、とんでもない改革逆行である。
政権公約(マニフェスト)に盛り込まれた子ども手当や公立高校の実質無償化、高速道路の一部無料化、ガソリン暫定税率の廃止といった一連の政策は本稿執筆時点で、何一つ具体的に決まっていない。本誌発売までに2010年度予算編成が終わっていれば、上出来だろう。
沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題は迷走に迷走を続け、平野博文官房長官が12月初めの段階で早くも年内解決断念を表明した。当然ながら米国は激怒し、日米関係は戦後最悪といっていいほどの危機的状況に陥っている。
いうまでもなく、日米関係の要は駐留米軍を基礎にした日米安保体制にある。日米同盟のひび割れた状態が長引けば、必ず経済分野にも波及し、中長期的に少なからぬ悪影響を及ぼすだろう。
すでに海外の投資家は日本を見限る動きを強めている。外国金融機関はもちろん、欧米の有名ブランドショップや外国報道機関も東京支店や支局を撤収したり、規模を縮小している。日本の平均株価も低迷している。
政権交代で日本が復活するどころか、世界から日本が見捨てられつつあるのだ。
いったい、なぜこんな事態になってしまったのか。
根本的な理由の一つは、鳩山政権が「革命にも匹敵する改革を断行する」と標榜しながら、重要課題の決定を先送りしてきたからだ。それも重要であればあるほど決められない。景気悪化はリーマン・ショックを起点にした世界的金融危機の後遺症もある。しかし、これだけ決定先送りが続くと、政治無策による「鳩山不況」という側面も否定し難くなってきた。
1ページ中 1ページ目
前のページ | 1 | 次のページ
バックナンバー記事
- CO2より酷い温暖化ガス (VOICE 2010年1月24日(日))
- 企業が本社を海外移転する日 (VOICE 2010年1月23日(土))
- 普天間騒動・米国の「演技」 (VOICE 2010年1月19日(火))
- ウェブが人間を司る社会 (VOICE 2010年1月18日(月))