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続・児童虐待

柳美里

きっかけは、それらの蘭だったのだと思う。

息子は五歳のときから「ランヤ本部長」を名乗り出し、クリスマスや誕生日には玩具ではなく洋蘭を買ってほしい、とねだるようになった。

小学校にあがってからはお小遣いやお年玉を貯めては、開花期が終って半額以下になった洋蘭の鉢を買ってくるようになった。

花屋の店員と親しくなったこともあって、サービスでもう一鉢もらったり、『趣味の園芸』や洋蘭関係の本で得た知識で、株分けや高芽取りや茎挿しを行って、新しい素焼き鉢や駄温鉢に植えつけ、二年前に二百鉢を超えてしまった。

同じころ、わたしは棄て犬・棄て猫をつぎつぎと我が家に迎え入れていた。

洋蘭は熱帯・亜熱帯に分布する植物なので、寒さには滅法弱い。戸外栽培ができる春から秋にかけては問題ないのだが、秋冬の鉢の置き場に困った。犬猫が歯や爪でイタズラをするので、同じ空間には置けないのだ。思い切って、「ランヤ」の温室を庭の片隅に設置することにした。

完成すると、「ランヤ本部長」は温室に入り浸るようになった。

一年後の六月、わたしは二階のトイレで飼っていた二羽の文鳥の籠を温室に移した。

ひとり餌も飛行も上手になり、くちばしもピンクになり、アイリングも色づき、生後六十日ごろからはじまった換羽も終了して、尾羽もすべて成長羽に生え替わった。

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COURRiER Japon
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    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

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