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続・児童虐待

柳美里

赤い目をした真っ白なウサギだった。

片目の潰れたウサギがどうなったのか—、父や母に訊ねたことはない。

訊ねるのは、怖い。

何故なら、わたしが犯した人生で初めての罪だからだ。

わたしは、ウサギの目を潰した罰を受けていない。

おそらく、ウサギはわたしの罪を背負って、処分される、という罰を受けたのであろう。

わたしと息子が「ランヤ」でいられなくなるとき

植物熱が再燃したのは、いくつかの文学賞を受賞した二十代後半のときだった。文学賞を受賞すると、出版社や知人や友人などから洋蘭の鉢が贈り届けられる。花が落ちたら棄てるのは酷薄な気がして、『洋ランの育て方のコツ』という本を購入して世話をしたところ、毎年かならず見事な花を咲かせてくれるようになった。

伴侶だった東由多加は自宅に客が訪れるたびに、「四年前にもらった蘭なんだって。柳さんが咲かせたんだよ。すぐ枯れる蘭を、スゴイでしょう? 蘭がこんなに可憐な花だとは思わなかったよ」と自慢げに語っていた。

東は二〇〇〇年四月二十日にこの世を去った。最後の一時帰宅のときに、デンドロビウム・ノビル系の白い花が満開だった。東はその鉢の前に、止まり木で羽をふくらませる鳥のような格好でしゃがみ込み、何も言わずに、ただ花を見詰めていた—。

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COURRiER Japon
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    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

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