わたしと妹は、家裁で審判を受ける羽目になった。調査官との面談はばらばらに行われ、盗みの方法などに食い違いが生じると、同じことを何度も繰り返し訊ねられた。裁判官による処分の内容は、「盗みの手口は巧妙で悪質、初犯じゃないのは明らかだし、監視員の女性に暴力を振るっているから窃盗ではなく強盗だ。本来ならば、少年院送致が妥当だけれど、深く反省している様子だから、今回は保護観察処分ということにするが、再犯したら、少年院に送致する」というものだった。
母は生活用品を盗み、父は犬を盗んだ
しかし、わたしは、反省も後悔もしていなかった。十五歳の妹に性体験の有無を執拗に訊ねた調査官に憎悪を募らせ、「バレたら面倒なことになる」ということは思い知らされたが、もし少年院に送致されて自由を奪われることになったとしても、自分はこの社会に適応することも隷属することも服従することもできない、という反抗心で全身を硬直させていた。
調査官や裁判官には黙っていたが、盗癖は親譲りだった。
母に連れられてデパートに行き、母の指示の下に売場の隅に積んである梱包済の羽布団を姉妹で担いだこともある。母は母で、右手にフライパン、左手に大きな鍋をぶらさげていた。
「いい? 堂々とするのよ。こそこそしたり、店員の顔を見たり、やましいような素振りさえしなけりゃ、べつにバッグや服に隠さなくったってバレやしないんだから」
わたしたち母子は、閉店の音楽が流れるフロアをゆっくりと歩いた。売り子たちはショップの入口に立って「ありがとうございました、またどうぞお越しください」とていねいに頭を下げてくる。
わたしたち母子は「堂々と」デパートの正面玄関から外に出ることに成功した。