「泥棒ッ! 万引きは泥棒なんだからねッ! 謝りに行かないと、学校に言いつけてやるッ!」
「学校に言うのはやめてよぉ……」
「早く行けッ!」
息子は、首でも絞められたような大袈裟な咳をして、しゃがみ込んだ。
「じゃあ、警察だッ! 警察に突き出そう! 泥棒は少年院に入れられるんだからねッ!」
門の格子にしがみつく息子の腕を叩いて門の外に引き摺り出した。
「謝ってくるまで、家に入れないからなッ!」
家の中にはいって鍵を閉めた。
怒りの余り体が震え、船酔いのような吐き気がした。壁に手をついて網戸の窓から外の様子を窺うと、「ついてってあげるから、正直に謝ろうね。さぁ、行こう」と宥め励ます彼の声とともに息子の泣き声が遠ざかっていった。
わたしは、サンリオショップで万引きをして、父親に「ムチ」で打ち据えられた後に、全裸で真冬の公園に置きざりにされたことを思い出した。