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続・児童虐待

柳美里

帰りが遅い息子は、その時何をしていたか

ある日、わたしは息子におつかいを頼んだ。

息子は、おつかいが大好きなので、黒い革表紙に金のペイントマーカーで「ランヤ本部手帳」と書いてあるスケジュール帳に、嬉々としてメモをしはじめた。

あいにく財布には五千円札しかなかったので、「お釣り、ちゃんと持って帰ってきてよ」と念を押して、自転車にまたがる息子を「気をつけて行ってらっしゃい」と門のところまで見送った。

息子の帰りは遅かった。

寄り道をしているのだろう、と思って仕事をしていると、門が開くギーッという音が聞こえた。

仕事を中断し、汗だくになっているであろうTシャツを着替えさせようと、新しいTシャツを用意して玄関で待っていたが、家の中にはいってくる気配はない。

窓から外を覗くと、金魚を飼っている水甕にビニール袋を逆さにして何かを放しているではないか—。

わたしは、慌てて外に飛び出した。

水甕の中には、二ひきのアブラハヤと一ぴきのニシキゴイの稚魚が泳いでいた。

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COURRiER Japon
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    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

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