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統計で見るGCC湾岸諸国の社会と経済(その2)

石油・天然ガスの生産量と埋蔵量

中東協力センター

審議役 前田高行

 

 湾岸GCC6カ国の社会と経済に関する各種の統計資料をもとに、それらを解りやすく視覚化し理解してもらおうとするのが本シリーズの目的です。

 第2回は、GCC諸国経済の根幹を成す原油および天然ガスについて、その生産量、消費量、可採年数等について、世界各国・各地域と比較しながら表と図で解説します。

 

1.    主要国の原油生産量
 1

順位

国名

生産量(万B/D)

比率

1

サウディアラビア

828

12.7%

2

旧ソ連邦

709

10.9%

3

米国

624

9.6%

4

イラン

371

5.7%

5

中国

321

4.9%

6

ベネズエラ

319

4.9%

7

メキシコ

307

4.7%

8

ノルウェー

292

4.5%

9

英国

251

3.8%

10

UAE

226

3.5%

11

イラク

218

3.3%

12

クウェイト

205

3.1%

 

その他

1,863

28.5%

 

世界合計

6,534

100.0%

 

(OPEC加盟国)

2,781

42.6%

出典:OPEC Annual Statistical Bulletin 1998
OPECの1998年統計資料によれば、サウディアラビアの原油生産量は828万バレル/(以下B/D)である。これは世界全体の12.7%を占めており、同国は世界最大の原油生産国である。
サウディアラビアに続く世界第2位、第3位の生産国は、旧ソ連邦および米国であり、それぞれ709B/D624B/Dの生産量である。GCC6カ国の中では、アラブ首長国連邦(UAE)が第10位の日産量226B/Dであり、またクウェイトは第12位の205B/Dであった。因みに1998年の世界原油総生産量は6,534B/Dであったが、そのうちOPEC加盟国の生産量合計は全体の42.6%(2,781B/D)を占めており、OPECの市場支配力は大きい。

2.    地域別原油生産量および石油消費量(1、2参照)
  1



    図  2



   原油生産量を地域別に示したものが図1であり、一方、各地域別の石油消費量を示したものが図2である。
中東は世界の原油生産のほぼ三分の一を占め、最大の供給源である。これに対して消費量は世界全体の6%に過ぎず、中東地域は消費量の4倍以上の原油を他地域に輸出していることになる。
これに対し、アジア・大洋州の原油生産量は世界全体の約一割であるが、消費量に関しては北米に次ぐ二番目の大消費地であり、世界全体の27%を消費している。つまり、この地域は生産量の約15倍を他地域から輸入していることになり、中東地域とは逆の様相を呈している。
さらにこれらの地域のうち地理的・経済的に関係の深い(1) 西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、アフリカ、(2) 北米および中南米をブロックとして眺めると、(1) 西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、アフリカのブロックは生産量シェアの合計が30%に対し、消費量シェアは33%であり、需給がほぼバランスしている。また(2) 北米および中南米のブロックは生産量シェア27%に対し、消費量は37%に達し、需給バランスを保つためには他地域からの輸入が必要である。
1および図2からもわかるとおり、他の地域あるいはブロックへの供給余力があるのは、中東地域のみであり、したがって、現在は北米地域とアジア・大洋州地域が、中東からの原油輸入を競い合っている、とも言える。さらに、次に述べる各国別石油埋蔵量を考慮に入れると、ヨーロッパ地域も今後は原油供給先を、中東地域に依存することは必至である。つまり北米、ヨーロッパ、アジアの世界三大経済圏は経済発展のために必要なエネルギー源として、中東地域の原油を分かち合うことこととなる。

3.    主要各国の石油埋蔵量と可採年数(図3,4参照)
世界全体で採掘可能な原油の量(可採埋蔵量)は1988年末で約1兆五百億バーレルと推定されている。これを国別で表したものが図3である。サウジアラビアが全体の四分の一を占めており、ついでイラクが11%、UAE、クウェイトおよびイランが各々9%であり、これらの中東五カ国だけで、世界の埋蔵量の63%に達する。このうちサウディアラビア、UAE、クウェイトのGCC三カ国だけでも43%を占めており、GCC諸国が世界の石油供給源としていかに大きいかがわかる。
  3



1998
年末の可採埋蔵量を同年の生産量で割った可採年数を示したものが図4である。これは同年の生産レベルを継続すると仮定し、今後何年間石油を採掘できるかを算術的に計算したものである。可採年数そのものは新規油田の発見或いは技術の向上による既存油田の回収率向上等により、毎年見直されるが、各国の将来の石油供給能力を推定する目安とすることができる。
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   世界全体の平均可採年数は44年である。最も可採年数が高いのはイラクであり、140年を越えている。これにクウェイト、UAE、サウディアラビアのGCC三カ国が続いており、各々の可採年数は129年、119年、87年である。但し、イラクは国連制裁で生産量を低く抑えられているため、実質的にはクウェイトの可採年数が世界一である。イランも含めると上位五カ国はいずれも中東地域にあり、石油に関しては中東のポテンシャル(潜在能力)の高さが際立っている。
これに対し、北米および西ヨーロッパ地域は現在の生産量シェアは決して低くないが(1参照)、主要生産国である米国、ノルウェー、英国の可採年数はいずれも十年以下に過ぎない。
このため、今後の石油の供給源は中東地域に限定される結果、先に述べたように西ヨーロッパ、北米およびアジア地域の多くの国が、中東地域の原油獲得競争を繰り広げることになりそうである。

4.    天然ガスの埋蔵量(5参照)
天然ガスは石油と並びエネルギーの重要な部分を占め、また環境に対する影響度が小さいエネルギーとして需要が拡大しつつあるが、1998年末の地域・国別埋蔵量を示したものが図5である。
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    天然ガスの埋蔵量は旧ソ連邦が圧倒的に多く、世界全体の36%を占めている。しかしながら、中東地域も大きな埋蔵量を有しており、各国のシェアはイラン15%、カタール7%、サウディアラビアおよびUAE4%である。その他の中東諸国を加えると、この地域の埋蔵量は世界全体の34%に達する。カタール、サウディアラビア、UAEGCC三カ国だけでも15%のシェアがあり、原油に限らず天然ガスについてもGCCは大きな地位を占めているのである。

以上

(中東協力センターニュース 20006/7月号より転載)