アップル社の音楽配信サイト「iTunes(アイチューンズ) Store(ストア)(iTS)」の利用者が身に覚えのない代金を請求される被害が多発している。昨年秋ごろからで、被害者は判明しただけで数十人いる。何者かにパスワードなどの個人情報を盗まれたとみられるが、手口は不明。アップル社はサイト側に原因があることを否定している。
札幌市内の弁護士は昨年11月、クレジット会社から届いた請求書を見て驚いた。前月16〜24日にiTSで音楽ソフトなど計52万円分を購入したことになっていた。身に覚えがなく、iTSからの情報流出を疑った。直ちにカードの効力を停止し、アップル社に原因究明を求めた。
同社からは購入契約の解約を断られた。クレジット会社に事情を説明したところ、自ら購入していないと認められ、請求を撤回してもらうことができた。
複数のクレジット会社によると、昨年秋以降、iTSの不正利用に関する相談が、多い社で数十件寄せられているという。一部の会社はセキュリティー部門が事実関係を調べた上で、請求を撤回している。撤回されない場合は、被害者が負担することになる。
東京都内の通訳業の女性は昨年11月、iTSのIDとパスワードが急に使えなくなった。アップル社に連絡したところ、IDが何者かに変更された上、約1万3千円分の音楽ソフトなどを購入されていたことが判明した。だが、同社からは解約を断られた。クレジット会社に相談したが、「ネット上のIDとパスワードが不正利用されたケースは補償の対象外」として請求の撤回を断られた。
相談した消費生活センターからは、IDとパスワードの管理責任は消費者側にあり、iTSのコンピューターが不正操作されて情報が流出したのでなければアップル社の責任は問えない、と説明されたという。女性は「15年近く通販サイトなどを使っているが、こうした被害は初めて。納得できない」と憤る。