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【オピニオン】 防衛政策で韓国に出遅れる日本

キャロリン・レディ氏(元米国家安全保障会議不拡散戦略部長)

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 今年、アジアは日米安保50周年と、朝鮮戦争勃発から60年という二つの重要な節目を迎える。この機会に日韓の外交政策がどう乖離してきたか、検証してみたい。

 世界経済の低迷と喫緊の国内問題のため、両国政府はともに限りある予算の配分に苦慮している。だが韓国は緊縮財政下でも2005年に打ち出した国防改革基本計画を中断していない。昨年李明博(イ・ミョンバク)大統領によって見直されたこの計画は2020年を目標として21世紀に直面する危機に効率よく対応するための軍事力を備えようとするものだ。

Via Bloomberg

オバマ大統領と会談する李明博大統領(韓国・ソウル、2009年11月)

 一方、日本は、5年ごとに更新され、昨年12月に終えられるはずだった防衛計画大綱の更新を2010年末まで延期した。それでも民主党率いる日本の連立政権は防衛予算を8年連続で削減することに疑問を感じていないようだ。

 日韓両国の間には、防衛システムに対する考え方にも大きな違いがある。韓国は昨年12億ドル(約1104億円)近くの武器輸出をし、2012年には世界でトップ10に入る武器輸出国になることを目指している。対照的に、日本の軍事産業は脆弱なままだ。国内需要の減少により業界は急激に縮小しており、武器の輸出を自ら禁じる法が残る限り、状況が好転する見込みは少ない。北沢俊美防衛相は12日、(武器輸出を事実上禁じている)武器輸出3原則を見直すべきとの考えを示した。だが鳩山首相は即座に「口が軽い」と非難し、3原則は堅持すると強調した。

 外交の手法に関する違いは特にアフガニスタン政策においても顕著だ。15日、アフガニスタンでの米軍中心の活動への日本の給油支援は期限切れとなった。物流面での支援を継続するより、日本政府は今後5年間で50億ドルの財政支援を選択した。この支援は大きなものだが、アフガニスタンの治安状況が不安定なままではその効果も限定的だろう。現地での活動に代わる日本政府の財政支援は、日本が90年代の「小切手外交」に回帰しているという印象が大きくなっている。この判断が吉と出るかどうかは経過を見なければならないが、日本のアフガニスタン政策は、今後日本が積極的な国際活動に関与することを避けようとする傾向があることを示唆している。

 韓国では国際問題において李大統領が積極的に自国のリーダー的役割を果たしてきており、状況は大きく違う。新年の演説で李大統領は2010年の三大国政課題の一つとして「グローバル外交」を挙げた。韓国はアフガニスタンで今夏、地方復興チーム(PRT)に要員360人を派遣するという大きな役割を担うことによって、この目標を達成しようとしている。

 李政権は、タリバンによって国民2人が殺害されたことを受けて前政権がアフガニスタンから撤退してわずか2年後、直接アフガニスタンに関与するという勇断をした。

 日韓両国の対米同盟も大きな隔たりを見せている。李大統領は最近、米韓同盟は「かつてないほど強い」と豪語した。韓国は2012年に朝鮮半島の戦時作戦統制権を米軍から移管されるにあたっての積極的な関与などを通じ、この絆の強さを示そうとしている。2009年10月の訪韓時に、ロバート・ゲーツ国防長官は軍備に対する韓国政府の努力を称賛し、米韓間の「積極的かつ戦略的パートナーシップ」を歓迎した。

 米日両国もその同盟関係を表現するのに同様の麗句を使っているが、それを証明するものは少ない。両国関係の最大の断絶は普天間の米軍基地をめぐる論争で、これは日本で大きな国内問題となっている。交渉に10年以上かかった移転に関する合意を尊重するのではなく、民主党率いる日本政府はそれを反故にして再交渉しようとしている。12日、鳩山首相は「年末」までにこの問題に対応すると約束して日米安保50周年の日を迎えた。残された時間は少ない。

 寅年の2010年、韓国は防衛面でアジアや世界における存在感を誇示している。対照的に日本は傷ついた子トラのように立ちすくんでいるように見える。日本は世界での自国の役割と、半世紀以上安全を保障してきた世界で最も強固な民主主義との同盟から受ける恩恵を把握しきれずにいる。両国、ひいては北アジア全体の安定と安全保障は韓国政府の勇断と、日本政府が弱腰を克服できるかどうかにかかっている。

(キャロリン・レディ氏は、2006年から2007年まで米国家安全保障会議[NSC]不拡散戦略部長を務めた。現在、日立-外交問題評議会の国際問題フェロー)

原文: The North Asia Security Split

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日本版コラム〔1月22日更新〕