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きょうの社説 2010年1月25日
◎片町まちづくり協定 老朽化ビル対策の一歩に
金沢市と片町商店街振興組合が結んだ「まちづくり協定」は市内24例目の後発組とは
いえ、地域が抱える課題の大きさを考えれば極めて重要な意味を持つ。協定にはアーケードの高さ基準を設けるなど景観重視のルールが盛り込まれたが、多くのビルが老朽化で建て替え時期を迎えており、片町が県都の商業地の顔として求心力を維持するためには、この問題は避けて通れない。昭和30、40年代に耐火建築促進法などにより、片町地区の近代化が進んだが、その 当時に建てられたビルは耐震性の面で安全確保が課題となっている。都市再開発に関する国の制度では、片町に集中するような小規模ビルは支援の対象になりにくく、金沢市は老朽化ビルの建て替え促進制度の創設を国に求めている。 民間の開発意欲を引き出すうえで行政の支援策は必要だとしても、ビル所有者らがまず 、まちづくりで認識を共有し、同じ方向に目をむけなければ前には進まないだろう。協定締結を老朽化ビル対策を考える足掛かりにしたい。 片町の「まちづくり協定」にはアーケードの高さを地上8メートルにそろえ、天井面は 光の透過性の高い不燃材料を基本にすることや、1、2階が住宅となる建物の建築を禁止し、空調施設などが道路から見えないよう配慮することが盛り込まれた。アーケードは設置から30年近く経過し、個々の改築で高さにばらつきが生じていた。景観の統一ルールはまちづくりの大きな一歩といえる。 片町ではイタリアの街並みをイメージした商業施設「プレーゴ」など新しい顔が定着す る一方、ビルの老朽化が地盤沈下につながりかねないとの危機感が出ている。「プレーゴ」のような商業モール開発、複数のオーナーが共同ビルを建設する案などが想定されているが、資金や今後のテナント需要の見通し、昼と夜の顔が混在する街の性格などからビル所有者らの考え方もさまざまである。 国には地域の実情に配慮した弾力的な再開発支援策を強く求めていきたい。国の重い腰 を上げさせるためにも、地域が一致結束し、まちづくりの熱意や魅力ある将来展望を示すことが大事である。
◎ガス田の共同開発 親中外交の真価試される
日中両政府が2008年に合意した東シナ海のガス田「白樺」の共同開発に関する条約
締結交渉が、中国側の消極姿勢で暗礁に乗り上げた状態になっている。先の日中外相会談で岡田克也外相が、もし中国側がガス生産に踏み切った場合、「対抗措置」を講じるという毅然(きぜん)とした姿勢を示したのは当然である。排他的経済水域(EEZ)の境界線画定で日本と中国が対立する東シナ海のガス田共同 開発は、鳩山民主党政権の「親中外交」の真価がもっとも鋭く試される問題であり、弱腰やあいまいさは許されないと心得てほしい。 中国が単独で開発を進める「白樺」(中国名・春暁)の共同開発合意をめぐって、日中 両政府の主張の違いがあらためて浮き彫りになっている。共同開発の合意文では、日中中間線付近にあるガス田「翌檜(あすなろ)」周辺の海域を共同開発区域とし、白樺については「中国企業は、日本法人が中国の海洋石油資源の対外協力開発に関する法律に従って開発に参加することを歓迎する」となっている。 中国と日本の企業が出資して共同開発を進めるということである。しかし中国側は、白 樺の「主権」は中国にあり、日本企業の出資は認めても共同開発とは本質的に区別されると主張し、場合によっては周辺海域で日本単独開発も辞さないという岡田外相の発言に強く反発している。 東シナ海のガス田共同開発は、尖閣諸島の領有権対立で解決が困難な境界線画定を棚上 げして合意に至ったものだ。境界線を争うなか、白樺の主権は中国にあるという強引な主張は、日本として到底認めることはできない。 08年に共同開発で合意した時、中国国内では日本への譲歩が過ぎるとして激しい政府 批判の声が上がった。共同開発に関する条約を結べば、再び反日世論と政府批判が高まりかねないという中国政府の警戒心が交渉の遅れにつながっているともいわれるが、鳩山政権の対中親和外交の陰で、中国側が主権を盾に、なし崩し的にガス生産を既成事実化していくようなことがないか監視を怠れない。
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