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トーク21 |
1月17日 |
歌は心を結ぶ懸け橋!! |
作曲家 服部公一さん 幼児期に“清く正しく美しい”音楽を 札幌創価幼稚園園長 平沼芳明さん 子どもの成長を見守り続ける存在に 童謡「アイスクリームのうた」「カレーライスのうた」といえば、子育て経験のある人なら、一度は耳にしたことがあるでしょう。今回の「トーク21」は、そうした童謡の名曲をはじめ、数々の楽曲を手掛けてきた作曲家・服部公一さんの登場です。札幌創価幼稚園・園長の平沼芳明さんとの語らいは、音楽の持つ力や、幼児教育の大切さなどをめぐり、テンポ良く繰り広げられました。 豊かな人間性をはぐくむ 平沼 東京に来る飛行機で、何げなく機内番組を聴いていると、偶然にも服部さんの童謡が流れていました。 服部 それはうれしいですね。私は決して童謡専門の作曲家ではなく、管弦楽曲や合唱曲、オペラ作品なども手掛けてきましたが、どうも「アイスクリーム」と「カレーライス」のイメージが強いようで(笑い)。 平沼 私たちの幼稚園でも、服部さんの歌に合わせてお遊戯をしたり、手品をしたり。幼児教育の現場に、なくてはならない曲になっています。何がきっかけで、子ども向けの歌を作られるようになったのでしょうか。 服部 半世紀以上も前のことですが、NHKがテレビ放送を始めて間もないころ、契約作曲家になりましてね。初めて担当したのが、番組用の童謡だったんです。 平沼 テレビ文化の創成期に立ちあっておられたのですね。 服部 子ども向けの音楽だからといって、私は幼児用にしようと思ったことはありません。もちろん、音域やテンポは子どもに合わせますが、ただ幼稚な音楽にはしなかった。芸術には、本来、「大人向け・子ども向け」という区別はないというのが、私の信念です。 平沼 子どもを下に見ることなく、“一人の人格”として認め、尊重していくという、教育者にとって大事な視点に通じるお話と思います。 服部 また、音楽は万国共通の“コミュニケーション・メディア”ともいえる。例えばメンデルスゾーン作曲の「結婚行進曲」を聴いて、葬式を思い浮かべる人はいないでしょう(笑い)。曲を聴けば、作り手の伝えたいことやテーマを、おおかた感じ取ることができるはずです。 平沼 同感です。ピアノで明るく、にぎやかな曲を演奏するだけで、園児たちは、たちまち笑顔になりますから。 服部 私は、幼児期に“清く・正しく・美しい”音楽をたくさん聴かせてあげることが大切だと、常々、訴えています。豊かな人間性をはぐくむ上で、音楽は絶対に欠かせません。 “人種の壁”を超えた経験 平沼 服部さんは、ミュージック・セラピー(音楽療法)の専門家でもいらっしゃいますね。 服部 1960年代の初めごろ、NHKの仕事半ばで米国のミシガン州立大学に留学し、当時の日本ではまだ知られていなかったミュージック・セラピーの勉強に入りました。 平沼 アメリカでのその後の貴重な経験をつづられた、新聞記事も拝見しました。 服部 それはどうも。大学での課程を修了し、アメリカのフリント市教育委員会から、音楽セラピストとして採用されましてね。大手自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)の工場で働く労働者の家族を相手に、音楽指導をしました。 平沼 当時は自動車産業の全盛期。GMの工場といえば、さぞかし規模も大きく、さまざまな人種の人たちが集まっていたことでしょう。 服部 人種や文化の違いが、争いの種になることも多かったようです。街の人々が安心して平和に暮らせるよう、市民に対する情操教育の一環として、市がミュージック・セラピーを取り入れたわけです。 平沼 お仕事の具体的な内容は? 服部 労働者の奥さん方のコーラスを指導したり、子どもたちにオーケストラの作品を書いてあげたり。そうした音楽活動の中で、人種の壁を超え、次第に心を通わせていく姿を見て、私のほうがかえって“音楽の力”を教わりました。 平沼 芸術の中でも特に音楽には情緒を安定させ、人と人とを結びつける作用があると感じます。幼稚園でもけんかをした子ども同士が、一緒に歌を歌ううちに、いつの間にか手をつないだり、肩を組んだりして、仲直りしています。 服部 自著(『父親しだいで子供は決まる!』集英社刊)にも書きましたが、「ひとりで歌うのは心の慰め、ふたりで歌うのは心の通い合い、おおぜいで歌うと心の広場ができる」――つまり、音楽は“心のコミュニケーション”なんです。少しぐらい音痴でもいい、合唱でなく“雑唱”になってもいい(笑い)。家族で一緒に歌う機会が持てれば、きっと円満な家庭が築けるはずです。 つよくただしくのびのびと 平沼 札幌創価幼稚園の創立者である池田名誉会長は、現在、園の歴史や幼児教育の基本精神について、小説『新・人間革命』「未来」の章につづってくださっています。 服部 (聖教新聞を開きながら)おお、本当ですね! 以前、私は東京富士美術館の開館式に招待していただいた折、池田先生にお会いした思い出があります。 平沼 そんなご縁があったのですか。私たちの園は今春で開園35年。卒園生もすでに6000人を超え、中には弁護士や博士として、社会に貢献している人もいます。また、「つよく ただしく のびのびと」との共通モットーのもと、香港、シンガポール、マレーシア、ブラジル、韓国でも、創価幼稚園が開設され、“創価の幼児教育”が高く評価されています。 服部 世界の国々で、未来を担う子どもたちをはぐくんでいるんですね。 平沼 服部さんも、幼稚園の園長を務められた経験がおありでしたね。 服部 私は幼児教育の専門家ではありませんから、特別なことはできませんでした。ただ、園児たちには「(1)善悪の判断(2)我慢(3)恥を知ること」の3点を教えました。小さいうちから身に付けておくことが、将来、必ずプラスになると思ったからです。 平沼 三つとも、人としての大切な資質ですね。 服部 幼児教育をないがしろにすることは「天につばする」ようなもの。幼いうちから精いっぱい愛情を注ぎ、大人が伝えるべきことを伝える努力を惜しまなければ、どんな子も人の道を踏み外すことはないと思います。 平沼 その点、創立者は、いつも園児や卒園生のことを温かく見守ってくださっています。どこまでも自分の未来を信じ、成長を待ってくれている人がいる――その信頼と安心感は、苦難を乗り越える大きなエネルギーになります。 服部 一度、私も札幌創価幼稚園を訪問して、ピアノを弾かせてもらいましょうか(笑い)。 平沼 ぜひとも! かわいい園児たちと、心から歓迎させていただきます。
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