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社説

ハイチ大地震 復興支援の枠組みづくりを 2010年01月24日

 ハイチ大地震から10日が過ぎた。首都ポルトープランス周辺地域では建物の30%が倒壊、住居を失った人は150万人、被災者総数は300万人と言われているが、正確な実態さえつかめていない。復興支援はこれからだ。日本をはじめ各国が連携した支援態勢を早急につくる必要がある。

 今回の地震は、震源が浅く、首都に近い人口密集地で起こったのが最大の特徴だった。死者は20万人を超えるとの見方も出ている。さらに深刻なのは、大統領官邸など政府機関の建物にも大きな被害が出て、機能不全に陥っていることだ。

 もともとハイチは1991年の軍事クーデター以降、独裁政権が長く続いて経済が停滞。民主化後も政情は安定せず、2004年から国連平和維持活動(PKO)に当たる国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が駐留している。

 13日の地震発生を受け、40カ国を超える国々が計1800人余りの救援隊を派遣し、救出や医療活動に当たってきた。しかし、政府機能がまひ状態で、国連などとの調整がうまくいっていないのが現状だ。

 さらに問題を深刻化させているのが、治安の悪化である。救援物資の配布の遅れなどに怒った一部市民が暴徒化し、首都では略奪や発砲も起きている。ハイチ政府は17日、30日間の非常事態を宣言し、夜間外出を禁止した。

 国連安全保障理事会は19日、MINUSTAHに兵士2千人と治安要員1500人の計3500人増派を決定。隣国の米国やカナダからは1万人を超える兵士が派遣され治安維持に当たっているが、まだ予断を許さない情勢だ。食料支援などを迅速に行うためにも、治安維持に全力を挙げてもらいたい。

 こうした中、日本政府の対応の遅れに国内外から批判が出ている。政府が派遣した緊急医療チームが現地入りしたのは地震発生から6日目だった。中国やフランス、スペインなどは発生日の翌日から活動を開始している。「治安の悪さ」が派遣を躊躇[ちゅうちょ]させた面もあるかもしれないが、時間を争う救援活動ではもっと素早い決断が必要だったのではないか。

 国連の赤阪清隆事務次長は22日、日本の緊急支援額について「少ない」と指摘した。国連の要求総額5億7500万ドル(約520億円)に対し、日本が拠出を表明したのは532万ドル(約5億円)にすぎない。フランスの6分の1、ドイツの2分の1という低さである。

 岡田克也外相は、25日にカナダ・モントリオールで開かれるハイチ支援を協議する国際会議で追加支援策を発表する考えだ。支援金だけではなく、日本にふさわしい支援策を示してもらいたい。

 AP通信によると、ハイチ政府は首都の市街地で家を失った40万人を郊外へ移住させる計画だという。当然そこには、仮設住宅や水、食料などが供給されなければならない。被災者の精神的ケアも必要だろう。

 ハイチのプレバル大統領は「経済や農業、教育などを発展させ、民主制度を強化しなければならない」と中長期的な支援を求めている。日本が貢献できる分野は多いはずだ。




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