社説
小沢氏聴取/民主も事実解明に努めよ
自らの資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件で、民主党の小沢一郎幹事長がきのう東京地検特捜部の事情聴取に応じた。
この事件では、小沢氏の秘書だった石川知裕衆院議員ら3人が、土地代金に充てた4億円を収支報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反容疑で逮捕されている。昨年3月に発覚した西松建設の巨額献金事件から続く、小沢氏の政治資金をめぐる捜査は大きなヤマ場を迎えた。
4時間を超える聴取の後、小沢氏は記者会見した。土地購入の原資となった4億円は金庫に保管していた個人資産と説明、ゼネコンからの裏献金が充てられたとする疑惑や虚偽記入への関与は否定し、幹事長は辞任しないとした。
土地代金は手元の資金で賄えたのに直後に同額の融資を受けたのはなぜか。政治資金の全面公開を持論とする小沢氏が、4億円もの不記載に本当に気づかなかったのか。この日の会見でも、国民の抱く疑問がすべて解消したとはいえない。
小沢氏は政権党の最高実力者である。検察との対決姿勢を貫くならば、より具体的に「潔白」の根拠を示す責任がある。残る疑問について、今後も記者会見や国会の場に出て説明する姿勢が欠かせない。
現職国会議員の逮捕、異例の与党幹事長聴取に発展した捜査は、政権運営や夏の参院選に重大な影響を与えかねない。それだけに検察当局は、公正、中立な捜査手法に徹し、全容を解明する責任を負う。
こうした緊迫した局面にもかかわらず、民主党内には小沢幹事長の説明責任を問う声があまり高まらない。それどころか、「捜査情報の漏(ろう)洩(えい)問題対策チーム」を結成し、捜査情報がリークされていないか報道内容を分析するという。
「透明な政治」を掲げた結党の原点に立つならば、党として小沢氏に説明を求め、事実関係を検証するのが先ではないか。政権に就いたからといって、厳しい世論を検察批判でかわそうとするかのような姿勢では、一層の反発を招くだけだろう。
何よりも、繰り返される「政治とカネ」の問題が政治不信を深める事態は避けなければならない。
鳩山由紀夫首相は「潔白を信じる」と繰り返すだけでなく、小沢氏に説明責任を果たすよう求め、企業・団体献金禁止の法改正を今国会で進めるなど、事態打開に向けた指導力を発揮すべきだ。
(2010/01/24 10:21)
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