小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる問題で、小沢氏が東京地検特捜部の事情聴取に応じた。
聴取の後、小沢氏は記者会見し、建設会社からの裏献金疑惑について「事実無根」、国への報告書への虚偽記入については「全く把握していない」と全面否定した。土地購入代金に充てた約4億円の調達方法については、自宅を買い替えたときに余った金や、家族名義の口座から引き出した金を事務所の金庫に保管していた、と述べている。
小沢氏の説明をうのみにすることはできない。問題のない資金なら、どうして資金洗浄(マネーロンダリング)まがいの複雑な資金出し入れを行ったのか。巨額の資金を“たんす預金”にしていた理由もよく分からない。
こうした疑問について、さらに詳しい説明を小沢氏に求める。
民主党も問われている。小沢氏に対し、国民への説明を促す声は党内から上がってこない。
それどころか、検察の捜査やマスコミ報道を批判し、牽制(けんせい)する動きが党内では強まっている。鳩山由紀夫首相も、検察との全面対決を宣言した小沢氏に対して先日「どうぞ戦ってください」とエールを送った。
首相は政治資金規正法違反容疑で逮捕された民主党衆院議員石川知裕容疑者の処分について問われたときは、「起訴されないことを望みたい」と述べている。
首相は民主党の代表であると同時に、行政機関のトップである。その中には検察も含まれる。立場をわきまえない軽率な発言と言うほかない。
小沢氏と民主党に国民が向ける目は厳しさを増している。世論調査では、小沢氏のこれまでの説明に「納得できない」とする答えが圧倒的だ。小沢氏に幹事長辞任、議員辞職を求める声も多い。
民主党は昨年夏の総選挙で、300を超す議席を国民から与えられた。背景には、クリーンで透明な政治への刷新を求める国民の期待があった。
小沢氏が詳しい説明を避け続け、民主党が追認するなら、期待は落胆へと変わるだろう。その先に待つのは政治不信だ。
民主党がいま考えなければならないのは、検察の捜査に身構え、対抗することではない。小沢氏の政治資金の実態を党としても調べ国民に説明することだ。小沢氏は国会の参考人招致にも応じる必要がある。国民への説明責任を果たすことが政権党としての責務だ。