自民党の大会がきょう開催される。どんな旗印の下、国民のために何をするのか、論議を深めることが党再生への第一歩だ。
危なっかしく、頼りなくて見ていられない−。今の自民党にそんな印象を持つ人が多いのではないか。
例えば先日の衆院予算委員会だ。谷垣禎一総裁が質問に立ち、鳩山由紀夫首相との党首対決を演出したのはいいとしても、論戦の中身がいかにも物足りない。
首相や小沢一郎民主党幹事長の政治資金問題の追及に、谷垣氏は多くの時間を割いた。ただし手掛かりにしたのは新聞などで報道済みの材料にとどまった。自民党独自の調査で新たな事実を突き付ける場面はなかった。
「きょう問うのはここまで」と、谷垣氏の方から矛を収める場面も何度かあった。これでは国民にアピールするのは難しい。
総選挙の後の総裁選で谷垣氏が選ばれたこと自体、党内の亀裂を避けるための緊急避難の色彩が濃かった。政府、与党を追及し、政権の座から追い落とすことを一番の使命とする野党第1党が党内融和を優先する。これでは民主党にも見くびられる。
大会では党の新しい綱領を決める予定になっている。原案の段階で見る限り、この綱領がまた中途半端なのだ。
党が目指す政府の姿として、原案は「不必要なことをしない政府」を掲げている。
総選挙で負けたのは、小泉政権の「小さな政府」政策が国民に見限られたからだ。だからといってかつてのばらまき路線には戻れない。さてどうする−。
「不必要なことをしない政府」という奇妙な言葉には、進む方向を見いだしあぐねている実情が映し出されている。
どんな政治を目指すか、旗印もはっきりさせられないようでは党の再生は難しい。離党議員がこのところ相次いでいるのも将来像が見えないからだろう。
民主党は先の総選挙で、国民の暮らしを重視する政策を掲げた。今度の予算案には子ども手当、高校授業料実質無償化など分配重視の政策を盛り込んでいる。半面、分配の“原資”を生み出す経済政策には弱点が目立つ。
そうした民主党に自民党はどんな旗印で対抗するのか−。党大会で問われるのはここだ。
政治を健全に保つには、政権を脅かす強力な野党が欠かせない。自由闊達(かったつ)な論戦で再生への手掛かりをつかむ大会にしてほしい。