経済情勢を考えると、大学生や高校生の就職が厳しくなるのは予想できた。企業経営者も景気の先行きに自信を持てなければ思い切った採用には動けまい。
今春卒業予定の大学生の就職内定率は昨年12月1日現在で73・1%だった。
前年同期に比べ7・4ポイント低下し、文部科学省と厚生労働省が調査を始めた1996年以来最低だった2003年12月現在の内定率73・5%を下回った。
だが、「景気が悪いから」と言い訳していても事態が改善するわけではない。
政府は昨年10月、貧困・困窮者、新卒者を最優先する緊急雇用対策をまとめ、高卒・大卒の就職を支援する専門職をハローワークに緊急配置する、大学などの就職相談窓口を充実させるためキャリアカウンセラーなどを置く-とした。
さらに、経済産業省などが採用意欲がある企業を掘り起こし、学生、生徒に情報提供するほか、九州各県でも今月、来月と就職面談会などが予定されている。
どんな仕事をしたいか、適性は、社会人としての心構えとは-など、学校で職業指導・就職相談を進める大切さは、以前から言われてきたことだ。
しかし、国の緊急対策にあらためて相談窓口の充実が盛り込まれた。これは職業指導が多くの学校でいまも不十分であることを示しているのではないか。
学校と行政、経済界の連携を強めていくべきだとも言われ続けてきた。
それもどうだろう。「七五三」は、新卒者が就職して3年以内に離職する割合を表す数字である。中学卒業で7割、高校卒で5割、大卒が3割に達する。厳しい就職戦線を勝ち抜いて入社しても、多くの若者が辞めていくのはなぜか。
もう一つ、気になる数字がある。就職希望率である。昨年12月時点で、卒業予定の男子大学生のうち就職を希望したのは68・6%だった。高いときは70%を超えた。就職氷河期といわれた2000年前後は65%台まで落ち込んだ。
大学院進学など目的がはっきりしていればいい。だが、就職を望みながら途中であきらめた者が多ければ、本当の希望率はもっと上がり、内定率は下がる。
高校卒業予定者の昨年11月末現在の就職内定率は68・1%だった。前年同期比9・9ポイント下がったが、過去最悪だった03年3月卒業者の60・3%よりは高い。
しかし、求人数で見れば約17万5千人で03年春卒の約18万人とほぼ同じだ。求職者数が減ったために内定率が高くなった。いまの状況は最悪期に近い。
かつては右肩上がりの成長と終身雇用を前提として「就職」より「就社」と言うのが正しかった時代があった。
だが、そんな時代は過ぎた。一人一人が職業人としての自分の人生設計を考えなければならない。学校はそのための教育に力を注ぎ、行政や企業は取得した資格や知識、技術など努力に応じた仕事に就ける仕組みを整えるべきだ。若い人を育てないと日本の将来はないのだから。
=2010/01/24付 西日本新聞朝刊=