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ゲーム業界:エンターブレイン浜村社長に聞く ビッグタイトル目白押しの09年、その後は…

エンターブレインの浜村弘一社長
エンターブレインの浜村弘一社長

 ドラクエ、FFの2大人気RPGの最新作が発売された09年。一昨年からの不況が、ゲーム業界にも影を落とし、ハードの値下げも相次いだ。ゲーム出版大手「エンターブレイン」の浜村弘一社長に、09年の総括と10年の業界展望を聞いた。【猪狩淳一】

--09年のキーワードは?

 豊作だったの一言です。ビッグタイトルが特に夏以降目白押しでした。「ドラゴンクエスト9 星空の守り人」「モンスターハンター3(トライ)」「ファイナルファンタジー13」「スーパーマリオブラザーズWii」、「ゼルダの伝説 大地の汽笛」「ポケットモンスター ハートゴールド/ソウルシルバー」。ファミ通の「期待の新作ランキング」も、同じタイトルしか並ばないんです。ハードは、PS3、PSP、Wiiの値下げがあって、ユーザー層が動きました。夏以降は充実しました。

--売り上げはいま一つでしたね。

 売れているものと、そうでないものの差が激しかったですね。 売り上げが下がった原因の一つは、任天堂のロングテールタイトルが、元気がなくなったのもあります。

--Wiiは一段落した。

 上半期にビッグタイトルがなかったのが大きいですね。後半になってWiiフィットプラス、マリオが出てきて盛り返しましたが、上半期がタイトルがなく、新規ユーザーが定着せず、数字を落とした原因の一つになっています。ゲームらしいゲームは、なかなか売れないんです。思ったよりヒットしない。WiiスポーツやWiiフィットが延々売れていて、従来とユーザー層が違うのでしょう。

--モンハン、マリオの影響は?

 ゲームらしいゲームが出たことで、少しゲームっぽいゲームが売れる市場ができればいいと思うのですが。モンハンは濃いゲームファンが遊ぶ作品ですから。マリオは、初週最高数を記録しました。みんなマリオ好きなんだなとは思いました。ドラクエもそうですが、安心して買って、損をさせなかったタイトルという共通点があります。安心のブランドで、ポケモンもそうですね。欲をいえばもっとタイトルが出ればと思います。次につながるとよいのですが。

--PS3について。

 「FF13」がどこまで伸びてくれるかですね。「FF12」は200万を本超えて230万本だったので、そこを目指してほしい。目標の200万本は考えられる数字が出るし、普及に勢いがでますね。Xbox360に移植しているから、世界では数字は悪くならないと思います。

 PS3少し元気になりました。コナミの小島秀夫監督が値が下がって「メタルギアソリッド4」が動いたことも言っていました。FFと値下げ効果で過去の作品が売れて、ミリオンセラーが3、4本出るような状況を期待したいですね。米国だとブルーレイディスク(BD)が効果を発揮していて。ブルーレイが遊べる理由でPS3を買う人が多くなっています。ようやくここにきてブルーレイが役に立っています。3万円でPS3のゲームが遊べて、BDが遊べるとうれしい限りですが、本当はローンチのときに言いたかったことでしょう。ここからローンチが始まった感じで、4、5年かけて売れると思います。

--Xbox360は。

 米の市場を考えると、PS3よりXbox360はずっと上ですから、サードパーティーのソフトはマルチプラットフォームになると思います。ただ、Xboxらしくなると全部洋ゲーになり、それが強みでもあり弱点ですね。日本で売れるビッグタイトルが出てくれば、もっと層が厚くなると思うのですが。

--据え置き型は見えてきました。

 買い安くなってきました。来年新型ハードが出ることはないと思いますし、このままもうしばらく続くでしょう。PS3とXbox360は、各首脳陣が長寿化させるといっており、新コントローラーを出してきましたからね。これが出て新型機はないと思います。

--Xbox360は体感型コントローラーの「ナタル」がありますね。

 ぼくも注目したいですね、ゲーム機が長寿化するということは、グラフィックの進化が期待できないということで、他の差別化ができなくなるんです。本音はマルチにしてほしくないわけで、コントローラーでイノベーションを出す思いがあるのでしょう。使いやすいコントローラーはライトユーザーを取り込むので、欲が出てきているのでしょう。任天堂のことだから、新しいことを考えていると思います。Wiiは、ハイデフの対応はどこか考えると思われます。でも2011年の地上波デジタルに合わせてどうするかでしょうが、来年どうこうというのはないと思います。

--ネットワークサービスについては。

 つながるですね。「ドラクエ9」があれだけネットで遊ばせたのは大きいですね。通信は、本当に楽しい仕組みです。「つなぐと怖い、危ない」という意識をもっていたネットに対しての「心のハードルを下げた」のは大きいと思います。大きく評価されるべきだと思います。ドラクエならではの勢い、影響力がありますね。そのドラクエがネットを通じてダウンロードさせる。ネットにつなぐことが怖くないと思わせたので、これからはネットユーザーが増えると思います。

--「ドラクエ9」が大ヒットしました。

 過去作の最高は(販売数が)380万本で、それは抜くと思っていました。値段が安く、プラットフォームの数が多く、セーブデータが一つなので。いくと思っていましたが、まだ伸びると思っていたのですが、足踏みをしています。個人的には500万本を期待していましたが。ただ、ダウンロードが1年あるので、じわじわ伸びる可能性もあります。予想の数字には達しています。でももっと伸びてほしいですね。ここから100万、できれば増やして欲しいと思います。後へ続くソフトへの道しるべをしるしてほしいですね。

--他の注目点は?

 物の売り方が変わってきたのは感じます。ソフトがでて2週間で終わって、中古に売るサイクルが習慣化していましたが、ずっと遊ぶという連鎖が起きています。一局集中化することになる原因になっていますね。ドラクエは売られないけど、新規が売れず……というのは、ネットの特徴でもありますね。先行者有利というネットの特徴が出ていますね。

--「モンスターハンター3」は?

 もっといくと思っていました。100万超えは、及第点ですが。Wiiというゲームの濃いファン向けがいないなかで、据え置き、ネットワークという“障害”が健闘はしました。でも150万~200万はいってほしかったと思っています。今でも売れていますからね。ゲームとしては面白かったですよ。モンスターが生きているという(ゲームの)進化の仕方は、開発陣が言っていたことなので。子供と遊ぶと「疲れてきたよあいつ」って言うんですよ。よく見ると、モンスターが「ハァハァ」といっているんですよ。生き物として見た開発陣の勝利ですね。最新作が出た時、前作も売れたりしますから。期待しています。

--「ポケットモンスター」はどうでしょう。

 過去に遊んだ人が7割いて、それが面白いですね。99年出た作品で、10年たった人が遊ぶ。10歳がハイティーンになりました。DSは団塊ジュニアですが、その中間の客層を増やしたのはいいことですね。テレビCMも狙っている感じがしました。あれを見ると昔やった人はやりたくなりますよね。任天堂は戦略的ですね。

--ゲームは文化になりました。

 そうなんですよ。FF7のコンピレーション、マリオ……。かつて遊んだ人がもう一度ゲームを楽しむというのが当たり前になりました。ドラクエやマリオを語るのは、一部の人の遊びではなくなっているのでしょうね。(厚みが出たと)そう思いますね。

--ニンテンドーDSiLLは?

 僕は重宝しています。画面が大きくて、文字が見える。あと音がきれいなんです。DSは本体が小さいので、LLは気持ちよく聞こえるのです。ポケモンで20代を取り込みました。団塊の世代は画面を大きく、脳トレを入れたLLで。それぞれ狙いが明快に出ていますね。任天堂の岩田聡社長がDSiで社会人や女性を狙いましたが、戦略が練られていますね。PSPは「PSP go」を出して軽く持ちやすく。でも任天堂はDSを大きくした。戦略の違いがあって面白いですね。

--PSP goはいかがでしょうか。

 ダウンロードできるタイトルを増やしてほしいですね。新作ゲームの半分しか対応してないんです。UMDがPCで読み込んで、ダウンロードできるのであれば、iPodのようにもっと伸びると思うのですが。ソフトの対応が遅れているのがちょっと不満ですね。(苦戦の理由は)コミュニケーション能力にある気がします。ソフトハウスとの会話がうまくいってないのではないでしょうか。シンパシーを持つクリエーターがいないのかなと心配ですね。PSPはいい感じでファンがついているのですが。PSP goの位置づけも中途半端のような気がします。

--iPhoneは。

 自由にいろいろなものが出せる。個人や小さいクリエーターはチャンスが増えたと思います。僕は、スクエニの「クリスタルディフェンダー」が面白かったですね。道を作って、兵器を配置する。兵士を並べる。FFのキャラを並べる。可能性を感じましたね。本当によくできています。逆転裁判も出ましたし、こぞって出てくるのではないでしょうか。ただmソフトが選べないんですよ。価格帯がバラバラで、1回無料にして認知度上げてというのが難しいですね。あれは、いいものが上に来ているランキングではないので。お金をかけて作った人がやる気がなくなりますね。音楽は価格が決まっていますが、ゲームは千差万別です。そこを比較するのは厳しいですよね。そうなると安かろう、悪かろうになるんですよ。

--ソフトのダウンロード販売の課題ですね。

 PSストア、Wiiのバーチャルコンソールもそうですが、「お店」のサービスがどれだけ面白いものになるかが課題です。Wiiはいいつながり方をするんですよね。PSストアやXbox360のマーケットプレースはPCが分かることを前提にしていますよね。任天堂は子供やお年寄りがやることを前提にしています。サービスの思想が全然違います。ストイックなまでのサービス精神がすごいですね。

--「FF13」がついに発売されました。

 すごくいいですね。本当の意味でハイクオリティーのRPGということを見せ付けてくれている。やっぱり、あのグラフィックを見ると、ゲーム的に面白い。この後出てくる「FFアギト13」もトータルで楽しめる。FFは違う世界に入ろうとしています。開発費が高いので、複数タイトルは開発の効率がいいと思います。個人でも期待しているし、業界、ビジネスでも期待しています。

--オンラインのFF14については?

 「11」と、どこまで違う世界を作れるかが課題でしょう。「11」はいい意味でも悪い意味でもパーティープレーだった。それを短時間、少人数で楽しめるようなコンテンツで、かつ集まるとなおよしという内容で、自信があるようですよ。オンラインゲームはノウハウが大事で、サービスのクオリティーは既に最高レベルなので、何がどう動くか楽しみですね。

--その他の注目は。

 レベルファイブですね。レイトン教授シリーズもそうですけど、イナズマイレブンもすごい。ゲームが飽和している中、プロデュース能力が高いですでよね。(社長の)日野(晃博)さん何人いるんだ?と思うぐらい、次々と面白い仕掛けをしてきます。日野さんをリーダーに、サイバーコネクト、ガンバリオン。東京以外の名古屋や大阪のスタジオも希望を持っている。本当に地方スタジオの希望の星です。

--10年はどうなるでしょうか。

 今年ビッグタイトルがどっと出たので、ソフトメーカーがどれだけがんばれるかに注目です。新規のタイトルを応援したい。「エンドオブエタニティー」「北斗無双」「龍が如く4 伝説を継ぐもの」が出た後、ゴールデンウイークと夏休みに何が出てくるかに上半期の浮沈がかかっているでしょう。

2010年1月24日

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