TVアニメよりも酷い格差がある劇場版アニメの展開
本日より劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 1st」「Fate / stay night – UNLIMITED BLADE WORKS」が公開されており、前人気が高い作品なだけに初日から盛況の様です。
来月公開予定の「涼宮ハルヒの消失」を含め、どの公式サイトにも、劇場版アニメではお決まりの文句である全国ロードショーの文字が堂々と出ていますが、これらのアニメが上映されるのは基本的には関東・関西・東海・札幌・福岡の5大都市圏のみです(最近は5大都市圏+仙台(一部静岡・広島)となるケースが出てきており、マクロスFやなのはもこのケースに当てはまります)。それ以外の地区は、5大都市圏で公開を終了した映画館からフィルムが回ってくるのを待つしかありません。これが概ね一斉に同時期に行なわれる為、初回封切(ファーストラン)の次の時期に上映される事をセカンドラン若しくは二番館興行、それ以降はサードラン・・・と呼ばれています。
昨年の11月に公開された「劇場版 マクロスF 虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~」もそのケースに当てはまっており、なおかつプレゼントキャンペーンはそれらの地区でしか行なわれていません。この様に、前売りプレゼントキャンペーン・来場者特典なども初回公開の劇場のみであるケースがとても多く、ここら辺でも露骨なまでに都会と地方の差が出ています。セカンドラン以降は最低でも1ヶ月以上遅れとなりますが、TVアニメの場合地方もカバー出来る衛星放送での放送開始が大都市中心の地上波放送後1ヶ月以内に行われるケースが殆どである事とは対照的です。また、TVアニメは地方局でも頑張れば放送出来ますが、アニメ映画は配給会社が強い権限を握っていて、地方がどれだけ努力してもセカンドラン以降になってしまいます(秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE3の場合、作者在住の地である島根でもファーストランが行なわれていますが、こういったケースは稀)。それでも上映されれば良いほうで、話題になりました「空の境界」の結局はかなりの地方で上映さえもされず、DVD待ちでした。
下の分布図を見てもらえればわかると思いますが、この状況で「全国ロードショー」と言われても、地方のほとんどの人は「はぁ?」という反応しか出来ません。全国で順次公開!だったらまだしも。
劇場版 マクロスF
劇場版 なのは
劇場版 Fate / stay night
涼宮ハルヒの消失
赤はファーストラン
桃はセカンドラン(マクロスF・1月公開)
黄はサードラン以降(マクロスF・2月以降公開)
何故こういう状況になっているのか、それは映画の観客動員の集計方法が原因です。現在では、原因でしたと過去形にするのが正しいかも知れません。
オリコンやその他マスコミで報じられる観客動員数やそのランキングは、興行通信社という会社によって集計されており、興行ランキング速報(※)として翌週には発表されています。この集計は今でこそ全国の集計となっていますが、当初は東京のみの集計でした。2002年10月に全国9大都市の集計に切り替わりましたが、その都市が東京地区、大阪地区、名古屋地区、横浜地区、川崎地区、京都地区、神戸地区、札幌地区、福岡地区なのです。映画業界では、これらの9大都市以外の地域をローカルと呼んでおりあまり重視はされておらず、この名残が未だに残っている事及びフィルム代の節約などの為に、2003年12月より集計は9大都市から全国に拡大してはいるのですが、アニメ映画の上映では9大都市を優先させるケースが多い訳です。
上に挙げたなのはやFate、マクロスFとは違って、ワンピースやアンパンマン、ドラえもんなどローカルでの収入を十分見込めるアニメは別格で、最初から文字通りの全国公開です。それどころか、動員数ランキング上位はローカルの占める割合が高い作品が多い訳でして、地方を軽視するとしっぺ返しに合うのは目に見えています。
TVアニメ以上に著作権問題が煩雑或いは地方の映画館の維持、またその長さゆえにネット配信などが簡単に行えない事情はわかるのですが、そろそろ映画業界も古い体質から脱却すべきだと思います。先日ニコニコ動画が行なったアンケートでは面倒くさかったり或いは家でじっくりと観たい為に1年に1・2回程度しか映画館に行かない人が多数を占めており、こういった人達をいかに映画館に呼び込めるのか、それは大都市圏優先上映では問題を片付ける事は難しいと考えます。地方では、公開が開始される頃には熱も冷めていますのでわざわざ映画館まで観に行こうとする人が少ないですから。
(※)興行ランキング速報について
週間通して集計はされますが、速報が出る土日(週末)のみの集計の方が重要視される事が多いです。こうした観客動員や興行収入などの統計が日本では事実上一社独占である為、その不透明さが問題になっています(以前、外資系の映画館が集計に入らないという問題も有りました。現在も外資系映画館でアニメ映画のファーストランがあまり行なわれないのは、この名残。)。また、詳細な数値は有料(月額1万!)の興行通信を購読しなければならず、一般人には敷居が高いものとなっています。ただランキングと銘打っても、それがどの様な集計を行った物なのかは判りません。アメリカの場合は全米興行収入として発表されますが、米国内の9割以上、ほぼ全ての映画館を網羅した統計となっています。日本でも、透明性が高く全国をカバーし、業界人以外でも容易に判るランキングが必要ではないでしょうか。