小沢一郎幹事長問題がクローズアップされていますが、私はここまで日本人(特にマスコミ)の知的レベルが下がっているとは思っていませんでした。
小沢氏が「分からない」と言っているのは、小沢氏が「任せているから」です。小沢氏の「任せる」の意味は、陸山会の「経営」を「全権委譲」しているという意味です。
普通の会社を考えれば分かります。経理は経理担当者と税理士が「全権委譲」されています。オーナーは提出書類には署名するものの、個別の取引には目を通しません。それだけのことです。
さらに、です。皆さんは「エンパワーメント」という言葉をご存じでしょうか。
エンパワーメント【empowerment】
1 権限を与えること。2 社会福祉政策において、従来のサービスを提供するやり方とは別に、受益者に直接手渡す補助金を増やして、それを選択する権利を与え、政府の介入や裁量を減らそうという考え。(大辞泉)
経済界では「権限委譲」と訳されますが、二文字足りません。本来の意味は「決定権限委譲」なのです。例えば、10万円までの出金の決定権限が課長にあったのを、係長に委譲することや、商品の返品の裁量を店長からスタッフに委譲するのがエンパワーメントなのです。
それでは、民間企業ではなぜエンパワーメントが行われるのでしょうか。その目的は2つあります。
1つ目は、人材育成の目的です。決定権限が拡大されるということは、その分自分の力量(パワー)を向上させなくてはなりません。なぜならば移譲された任務は、以上前に上長が行っていた任務であったからです。
もう一つの理由は、部下の「やる気」を高めるためです。「お前に任せた」の一言が、どれだけ人をやる気にさせるでしょうか。
反対に、部下を信頼せずに部下の仕事を常にチェックしていたらどうでしょう。自分に当てはめて考えてみてください。
自民党は、ボスが秘書を信じずに収支報告書を何回もチェックするのが正しいと主張していますが、鳩山首相や小沢幹事長は違います。しっかりとエンパワーメントしているのです。
私は、原子力発電所の所長から「箸の上げ下ろしまで毎日役人にチェックされている」と聞き、この国のお上意識が現場の力をそいでいると実感しました。
鳩山政権は、まさに霞が関の任務を地方自治体にエンパワーメントしようとする政権です。より大きな見地から、より分かりやすく国民に説明してほしい、政権交代を待ち望んだ国民の一人としてそう申しあげたいと思います。