<せんぱばんぱ>
世界銀行の見通しでは世界の景気は回復しつつあるが、景気刺激策の効果が薄れると、腰折れしかねないそうだ。
それは日本についても当てはまる。そこで、例えば榊原英資早稲田大教授(元財務官)は、本予算も成立していない段階だが、その補正予算の準備を始めるべきだと言う。賛成する人が多いのではないか。
だが、財源はどうするのか。これ以上国債を出すと暴落するのではないか。
全然平気だそうだ。とにかく不景気だから銀行は国債を買うしかない。50兆円だろうと60兆円だろうと、市場はぺろりとのみ込んで、長期金利の上昇はごくわずかだろう、と。
まあ、そうでしょう。来年度予算の新規国債発行予定額は44兆円だが、あと5兆~10兆円増発してもどうということはなさそうに思われる。
財政再建は必要だが、そのためにはまず、景気をよくしなければならない。問題は公的債務の国内総生産(GDP)比であって、これを現状以下に封じ込めれば財政は破綻(はたん)しない。具体的には金利より高い成長率を達成すればいい。分かりやすい理屈である。
一にも二にも成長だ。
ところが、ハーバード大学の財政学の権威ケネス・ロゴフ教授らの最近の研究によると、公的債務のGDP比が90%を超すと、その国の成長力は平均して約4%も低下してしまう。44カ国の財政史を200年にわたって精査した結果である。
まいったなあ。意味するところは重大だ。日本の公的債務のGDP比は国際通貨基金(IMF)によれば今年219%。公的債務から政府資産を差し引いた純債務残高でも105%なのである。平均で4%も成長が押し下げられたら、日本はプラス成長すらできなくなる。
国債を増発して成長をめざす時代は終わった。国債を出せばそれだけ、日本は低成長国家に向かうのだ。(論説室)
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ronsetsu@mainichi.co.jp
毎日新聞 2010年1月24日 東京朝刊
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