社説

小沢氏聴取/この中ぶらりんいつまで

 検事に相対する以上は、事前に入念な準備をしたことだろう。しかし、綿密に資料を検討して臨んだ捜査の側がどう受け取ったかは分からない。

 小沢一郎民主党幹事長がきのう、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で東京地検特捜部の任意での事情聴取に応じた。約4時間半にわたって、元秘書の衆院議員石川知裕容疑者ら3人が逮捕された容疑内容とのかかわりを尋ねられたようだ。

 聴取の後、小沢氏は関与を全面的に否定する文書を出し、記者会見であらためて潔白を強調した。一方で、聴取の中身に矛盾がないかどうかを検察側が明らかにすることは望めない。

 捜査が終結するまで、有権者が真相に近づく機会はないまま、しばらくは中ぶらりんの状況が続くことになる。もどかしさや嘆かわしさ、いら立ちは当面消えそうにない。小沢氏が「断固として戦っていく決意」を表明しているとなれば、相当長引く可能性もある。

 打開の鍵は民主党内の空気が変わるかどうかだ。検察との対決色を鮮明にし、報道批判も次から次へという状態を誰も変えようとはしないのか。政権党としての慎みのなさは、危うい水位に達している。

 陸山会が購入した土地代金の原資4億円は、どこから調達されたのか。裏献金とされる水谷建設の5千万円が含まれてはいなかったのか。収支報告書の虚偽記入を小沢氏は本当に認識していなかったのか。事情聴取はこうした疑問点を中心に進められたとみられている。

 原資は銀行から引き出した現金のうち個人事務所の金庫に保管していたものだ。水谷建設に限らずほかの会社からも不正な献金は受け取っていない。小沢氏は聴取に対してそう答えたと会見で説明した。

 収支報告書への記入については「全く把握していない。秘書から相談されたこともない」と会見で述べた。土地代金支払い後に融資を受けたいきさつは「関与していないので分からない」と答えた。

 裏金の疑惑に対しては「事実無根」、収支報告の事務手続きや経理の細部は「秘書に任せていた」というのが、小沢氏の説明の骨格である。

 この論法に意外性はない。秘書が登場する不祥事で多くの政治家がそう語ってきた。検察にとっては恐らく、想定していた通りの対応だっただろう。

 意外な展開を見せているのが、石川容疑者逮捕以来の民主党の動向である。

 鳩山由紀夫首相が小沢氏に「戦ってください」と言ってみたり、石川容疑者の不起訴を望むと発言したり。検察の情報漏えい対策チームの設置を決めたかと思えば、法務・検察が慎重な取り調べ可視化法の推進を持ち出してけん制する。脱官僚依存の旗印は、「捜査の政治主導」を意味していたわけではないだろうに。

 検察との全面対決を演出して見せて、有権者に何を訴えようというのか。「政権党対検察」の構図が固まってしまう前に、冷静に考え直してほしい。

2010年01月24日日曜日

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