2月上旬にカナダで7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。議長国カナダは金融システム改革や世界経済の不均衡の是正などを主要な議題に想定していたが、米オバマ政権が発表した新たな金融規制案への懸念が広がり、世界の金融市場は揺れている。G7はまず、市場の動揺と過度な相場変動を抑えるメッセージを発する必要がある。
前週後半の世界の株式・外為・商品市場は大荒れとなった。ギリシャなど一部欧州諸国の財政不安、中国が引き締め政策に転じるとの観測に加え、オバマ大統領が金融規制案を発表したからだ。ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は20日から3日間で552ドルも下落した。
金融危機の背景にあったリスクの高い金融取引を規制し、金融機関の規模拡大を抑えようとする米政府の動きが、投資資金の流れを妨げ、回復し始めた景気にも悪影響を及ぼすのではないかと市場は懸念する。
G7で議長を務めるカナダのフレアティ財務相は、景気が上向くにつれ金融システムの改革機運が後退したとして、金融改革を議題にする考えを示していた。オバマ大統領の規制案も、金融危機のさなかの有事の金融機関支援から、次の段階への政策転換の宣言ともいえた。
だが世界景気の足取りはまだ不確かで、金融市場が動揺するのは望ましくない。G7の市場への影響力はなお大きい。2月の会議で今後の金融規制を話し合うとしても、市場を落ち着かせる配慮が必要だ。
世界的な不均衡の是正とも関連して、フレアティ財務相はG7で中国の人民元を含む「人為的に操作されたアジアの通貨」について話し合いたい意向も示していた。
中国政府は2008年半ばから人民元の交換レートを米ドルにほぼ固定している。中長期的にみれば、経常収支の不均衡是正や中国の持続的成長に向け人民元レートの柔軟性を高める改革は欠かせない。G7での突っ込んだ論議は有益だろう。
ただ、人民元の対ドル固定は円を含む他のアジア通貨の過度の上昇を抑えてきた面もある。G7での論議が円などの過度の上昇圧力にならないよう、菅直人財務相や白川方明日銀総裁は細心の注意を求められる。