パレスチナ情報センター

中東和平問題に関する政党アンケート

2009年8月17日

8月30日の衆議院選挙を前に、各政党に対して「中東和平問題に関するアンケート」を行いました。結果は下記の通りです。

はじめに

以下は、アンケートの前文です。

「パレスチナ情報センター」では、この度の衆議院選挙において、有権者の参考に資するため、各政党にたいして中東和平問題に関するアンケートを行うことにいたしました。

日本政府は、1993年のオスロ合意以降、「中東和平」に大きく関わり、これまで累計10億ドルにのぼる支援を行ってきました。しかし、この16年間、その「中東和平」は進展するどころか、ガザの虐殺に象徴されるとおり、ますます解決への道が遠ざかっているように思われます。今年1月に就任したオバマ米大統領は、歴代政権と比べると、入植地の拡大凍結をイスラエルに強く求めるなど、これまでの「中東和平」の限界を踏まえた政策転換を行おうとしているようにも見受けられます。

ここにおいて、日本の中東政策も抜本的な見直しが求められているとの認識に立ち、多くの市民が中東和平問題に関心を寄せている今こそ、この問題に関する貴党の意見を聞かせていただき、有権者の投票行動に反映できるようにしたいと考えております。何卒、ご協力の程、よろしくお願い申し上げる次第です。

なお、いただいた回答は当センターのウェブサイトで公開させていただきます。大変お忙しいかとは存じますが、公示日前の8月16日までにファックスにてご回答を頂きますよう、何卒よろしくお願いいたします。

2009年8月6日 パレスチナ情報センター

【送付先】(順不同)
【回答があった政党】(回答が送られてきた順)

質問と回答

【質問一覧】

  1. イスラエルによるガザ侵攻について
  2. イスラエルによるガザ封鎖について
  3. ハマースに対する日本の態度について
  4. 入植地問題
  5. パレスチナ難民問題
  6. 日本とイスラエルの関係について
  7. 中東問題に関する二階堂官房長官談話について
  8. 「平和と繁栄の回廊」構想について

【文章による別回答】

  1. 民主党
  2. 国民新党(「回答を差し控えたい」との回答)

質問1: イスラエルによるガザ侵攻について

昨年12月27日から3週間にわたり続けられたイスラエルのガザ侵攻では、300人の子どもを含む1400人のガザ住民が殺害されました。この出来事について貴党はどのようにお考えでしょうか?

  1. イスラエルによる戦争犯罪であり、責任者処罰と被害者への補償が行われるべきである。
  2. イスラエルとハマース双方に違法行為があり、一方の側に偏った批判はなされるべきではない。
  3. イスラエル軍の一部に過剰な武力行使があったが、全体としては正当防衛の範囲内とみなし得る。
  4. その他

「1. イスラエルによる戦争犯罪であり、責任者処罰と被害者への補償が行われるべきである」と答えた政党

「2. イスラエルとハマース双方に違法行為があり、一方の側に偏った批判はなされるべきではない」と答えた政党

「4. その他」と答えた政党

質問2: イスラエルによるガザ封鎖について

イスラエルは、ガザ地区に対して何年にも渡り、厳しい封鎖政策を課し、現在も、ガザ住民は「人道的危機」の状態にあると言われています。このことについて貴党はどのようにお考えですか?

  1. ただちに封鎖を解除すべきである。
  2. ハマースの穏健化・非武装化と引き換えに、段階的に解除すべきである。
  3. ガザからのイスラエル攻撃が行われない保障が得られるまでは封鎖の継続は必要。
  4. その他

「1. ただちに封鎖を解除すべきである」と答えた政党

「2. ハマースの穏健化・非武装化と引き換えに、段階的に解除すべきである」と答えた政党

「4. その他」と答えた政党

質問3: ハマースに対する日本の態度について

現在ガザを実行支配しているハマースは、2006年のパレスチナ評議会選挙で勝利したにも関わらず、国際社会からボイコットされてきました。このことについて貴党はどのようにお考えですか?

  1. 和平にむけた働きかけやガザ支援の円滑化のため、ボイコットを解除し、話し合いをすべきである。
  2. 議員のガザ訪問等、何らかのルートを通じて、ハマースの側の意見を聞くことは重要である。
  3. オスロ合意を受け入れ、武装闘争を放棄するまでは、一切の接触を避けるべきである。
  4. その他

「1. 和平にむけた働きかけやガザ支援の円滑化のため、ボイコットを解除し、話し合いをすべきである」と答えた政党

「2. 議員のガザ訪問等、何らかのルートを通じて、ハマースの側の意見を聞くことは重要である」と答えた政党

「4. その他」と答えた政党

質問4: 入植地問題

オバマ政権は、新たな入植地建設の凍結をイスラエルに求めていますが、ネタニヤフ政権は入植者人口の自然増などを根拠に拒否しています。このことについて貴党はどのようにお考えですか?

  1. すべての入植地は違法であり、撤収されなければならない。
  2. すべての入植地撤収は非現実的であるが、新たな入植地の建設や拡大は凍結すべきである。
  3. ある程度の入植地の増加・拡大は認められるべきである。
  4. その他

「1. すべての入植地は違法であり、撤収されなければならない」と答えた政党

「2. すべての入植地撤収は非現実的であるが、新たな入植地の建設や拡大は凍結すべきである」と答えた政党

「4. その他」と答えた政党

質問5: パレスチナ難民問題

イスラエル建国に伴い、70万人以上のパレスチナ人が難民となりました。国連総会決議194号は、パレスチナ難民の故郷への帰還権を確認していますが、イスラエルは認めていません。このことについて貴党はどのようにお考えですか?

  1. 国連決議にもとづき、パレスチナ難民の帰還権は全面的に認められるべきである。
  2. 難民の帰還権はイスラエルの「ユダヤ性」が保障される範囲で部分的に認められるべきである。
  3. イスラエル領内への難民の帰還は非現実的であり、パレスチナ側の妥協が重要である。
  4. その他

「1. 国連決議にもとづき、パレスチナ難民の帰還権は全面的に認められるべきである」と答えた政党

「4. その他」と答えた政党

質問6: 日本とイスラエルの関係について

ガザ攻撃以降、イスラエルに対する国際世論は以前に比べて厳しくなっています。イスラエルが今のまま占領を継続し続ける場合、経済制裁を課すべきだとの意見も出てきています。このことについて貴党はどのように考えられますか?

  1. 占領をやめさせるためには、経済制裁の検討も含め、イスラエルへの国際的な圧力が必要である。
  2. 中東和平には中立の立場から貢献すべきであり、一方的なイスラエル批判は避けるべきである。
  3. イスラエルとの積極的な友好関係を通じて、必要な提言をしていくことが重要である。
  4. その他

「1. 占領をやめさせるためには、経済制裁の検討も含め、イスラエルへの国際的な圧力が必要である」と答えた政党

「4. その他」と答えた政党

質問7: 中東問題に関する二階堂官房長官談話について

1973年、二階堂官房長官は、「1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行なわれること」を含む談話を発表しました。しかし、その後の中東和平プロセスの進展のなかで、この原則はうやむやにされてきた印象があります。このことについての貴党の考えをお聞かせください。

(「二階堂官房長官談話」については、外務省:中東問題に関する官房長官談話を参照のこと)

  1. 「二階堂談話」は、現在においても日本の中東外交の原則として意義を有している。
  2. 「二階堂談話」に今も効力があるとは言えないが、「全占領地からの撤退」の原則は重要である。
  3. 「二階堂談話」は、親パレスチナに偏り過ぎた内容であり、現状には適さない。
  4. その他

「1. 「二階堂談話」は、現在においても日本の中東外交の原則として意義を有している」と答えた政党

「4. その他」と答えた政党

質問8: 「平和と繁栄の回廊」構想について

「平和と繁栄の回廊」構想は、日本の中東政策の中心的事業とされてきていますが、実際には、イスラエルの占領政策に阻まれ、大きな進展はなく、パレスチナのNGOからは、占領の継続を前提としているなどの問題が指摘されています。この構想について貴党はどのように考えられますか?

(参考資料:パレスチナのNGOから表明された「平和と繁栄の回廊」構想に関する声明(抄訳):ヨルダン渓谷における現在の開発計画に関する懸念

  1. 占領の終結に寄与するというヴィジョンがないのであれば、中止すべきである。
  2. 占領の終結という目標設定のもと、地元住民のニーズに基づき、大幅に見直すべきである。
  3. 積極的に推進すべきである。
  4. その他

「2. 占領の終結という目標設定のもと、地元住民のニーズに基づき、大幅に見直すべきである。」と答えた政党

「3. 積極的に推進すべきである」と答えた政党

「4. その他」と答えた政党

文章による別回答

以下は、アンケートの各質問への個別回答とは別に送られてきた文章による回答です。

民主党

中東和平問題については、強い関心を有しており、「民主党政策集INDEX2009」においても、『イスラエル・パレスチナの和平合意に向けて』と題し、「イスラエル、パレスチナの政治情勢の変化を注視しつつ、真の中東和平実現に向けて、イスラエルとパレスチナ間で早期に和平合意が達成されるよう、国連や米国はじめ関係諸国とともに、双方に積極的に働きかけていきます。また、国際協力機構(JICA)等を通じて行っている対パレスチナ支援を強化し、経済復興や信頼醸成を促進します」と記載しています。

今後の在り方等に関するアンケートにある個別の諸課題に対しても、パレスティナの状況の変化等に対応しつつ、上記方針に則って進めていきます。

参考サイト:ガザ情勢の悪化について(談話) 民主党『次の内閣』ネクスト外務大臣 鉢呂吉雄

国民新党

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。また、この度はご質問の文書をいただきましてまことにありがとうございます。

まず貴会が国際問題の中で最も難易度が高い事案について、熱意をもって取り組んでおられることに心から敬意を表します。

我が党として、ご質問内容について鋭意検討しましたが、期限内に、個別テーマに関して、党の見解をまとめ回答を出すことは困難と判断し、回答を差し控えさせていただくことになりましたので、よろしくお願い致します。

イスラエルの侵攻により子供たちを含むガザ住民が殺害された事件はつい最近のことであり、繰返される殺戮と応酬は映像等を通じて、日本を含む全世界に計り知れない衝撃と心の痛みを与えるものとなっています。国民新党は、これまで積み重ねて来た政府外交の努力を土台にして、今後の中東和平のために英知を結集させていきたいと決意する次第です。

最後に貴会のますますのご活躍を祈念し、回答のご連絡とさせていただきます。