ふだんたくさん歩けば生活習慣病にかかりにくくなり、医療にかかる費用も減らせそうだ。じゃあ、その効果は1歩あたりいくら? 厚生労働省の研究班がそんな試算をしたら、「0.0014円」という結果が出た。ほんのちょっとにみえるが、日本全体でみれば年間2千億円前後の効果も期待できるらしい。
歩行習慣によって糖尿病や脳卒中、心筋梗塞(こうそく)などが起きにくくなることが知られている。研究班はこうした病気に関して「歩数がどれだけ増えれば、発症リスクがどれだけ下がるか」を検討した研究論文を集めた。それぞれの病気の治療や入院にどれくらいの費用がかかっているかを示した厚労省の統計などを使い、いまよりも歩数がどれほど増えれば、医療費がどれくらい減らせそうかを調べた。
加藤昌之・国際協力医学研究振興財団主任研究員らが中年期の千人の集団をモデルに計算したら、現状より歩数が3千歩(2キロメートル前後、約30分)増えることで今後10年間にかかる医療費が1569万円、5千歩なら2512万円減らせそうなことがわかった。死亡者が出ることも考えて1人の1歩あたりを算出すると、それぞれ0.00147円、0.0014円となった。1万歩でほぼ14円。
「それだけ?」という気もするが、20歳以上の日本人みんなが毎日、いまより3千歩多く歩いたとすれば、年間で約1600億分円になる。
試算では、糖尿病や脳卒中、心筋梗塞などにかかる年間医療費を平均5.5%減らせることもわかった。高齢者も含めたこうした医療費は年4.9兆円ほどかかっているとされるので、2700億円近く節約できる計算だ。
生活習慣病を防ぐには、ある程度まとまった歩数が必要になる。ぜんぜん歩かない人が1歩増やしても、それだけで経済効果は望めない。
主任研究者の井形昭弘・名古屋学芸大学長は「健康寿命が延び、その間を楽しく過ごせるとしたら、恩恵は経済効果だけでは計り知れない。たくさんの人に歩行習慣を身につけてほしい」と話す。(田村建二)