経済観測

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経済学者の採用=東京大教授・伊藤隆敏

 1月3~5日に開催されたアメリカ経済学会年次大会に参加するため新年早々アトランタへ出張した。学会では論文を1本発表したが、それより東大の経済学研究科の採用面接に時間を使った。アメリカ経済学会は、実は、経済学PhD(博士号)取得予定者の就職面接会も兼ねている。

 採用側の大学は学会期間中の3日間で1人30分の面接を40人ほどこなすのが通常。学生は、一流大学卒業で超優秀の評判が立ったものは20校を超える面接に招待されることも珍しくない。一方、出身大学や専攻分野にもよるが数校の面接しか入らない人も多い。面接まで押し込むのは指導教員の力量でもあるが、面接の30分でいかに自分の長所をアピールできるかは本人次第。面接側の質問も鋭い。

 さて今回の東大は、5分野5人の採用を考え、6人の教員が出張、シフトを組みながら国籍多様の34人を面接した。面接しながら、面接されていた30年前の自分が重なった。

 このアメリカの「ジョブ・マーケット」に参加することで、アメリカの最近の研究の「はやり」を知ることもできるし、学生を売り込む側のアメリカの大学の先生(旧友)との情報交換もできる。

 しかし、東大の採用は苦戦の連続だ。経済学新PhDの東大での給与はアメリカ一流大学の半分。いまや日本経済も研究対象としての価値がはげ落ちた。最上級の人材はとれない。さらに、日本語ができない学生にとっては、東京での生活は非常に不安に思えるらしい。われわれは、失業よりは東大で我慢する、という二流学生は採用したくない。これはと思う学生には、東大経済学研究科の長所を大宣伝。これから面接で厳選した学生を招待して就職セミナーをさせるステージだ。

毎日新聞 2010年1月21日 東京朝刊

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