主砲は、涙を隠そうとはしなかった。同点で迎えた十回二死走者なし。三塁手・筒香はゴロを捕球し、一塁へ悪送球。打者走者が二塁に到達すると、直後の右前打で二走が生還。自らの失策が、サヨナラ負けという悲劇を招いた。
「チームのみんなに申し訳ない。(試合の展開に)冷静でいられなくなってしまった」
チームを何度も救ってきたバットも快音は響かず、4打数無安打に終わった。
序盤に8点を失ったものの、4点差に追い上げた八回二死一、二塁では敬遠四球、同点に追いついた九回一死二、三塁では一ゴロ。打撃で貢献できないことが冷静さを奪い、「何とかアウトにしてやろうと思った」と、大事なところでの送球に力みが生じてしまった。
渡辺元智監督は「筒香も人間なんだということ。打つだけじゃダメだということを学んでもらえれば」と、精彩を欠いた主砲をかばった。
今後の進路が注目されるが、プロからのドラフト指名が競合することが予想される。「自分の野球のすべてをレベルアップさせて頑張りたい」。高校通算69本塁打のスラッガーの最後の夏は涙で幕を閉じた。これをバネにさらなる上を目指していく。(伊藤昇)