2009年6月27日の広島−中日 3回裏無死、逆光で赤松の打球を見失い、二塁打にした藤井=マツダスタジアムで
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中日が今シーズン、医療用の特殊レンズを一般向けに用いた“魔法のサングラス”を導入することが22日、分かった。
マツダスタジアムなど屋外デーゲームの逆光対策。業者に特別注文を出したのは、落合博満監督(56)自身。23日にサンプルが届き、2月の沖縄春季キャンプでテストする予定。デーゲームは年々増加傾向にある。特注サングラスでVの視界も良好だ。
野手を中心に、多くの選手がデーゲームで使用するサングラス。多くの場合、選手自身が求め、個人的に導入する。だが今回の中日は流れが違う。指揮官自らが極上モノを要望。異例ともいえる行動の裏側には、昨年の苦い経験があった。
4月11日、広島戦。場所は初見参の敵地・マツダスタジアムだ。終盤の大事な場面、ワンプレーによって勝利が大きく遠のいた。同点の8回無死一塁、石原のバントが投手頭上の小飛球。これを清水昭が落としてしまい、犠打に。凡プレーの原因は、西日が目に入ったためだった。6月27日にも藤井が赤松の右中間飛球に追いつきながら“太陽のいたずら”で落としてしまった(記録は二塁打)。2つのケースとも当事者はサングラスを着用していなかった。
思わぬところに落とし穴が待ち受けるデーゲーム。中でも最大の難敵はマツダといえる。落合監督は対策が急務と考え、手を打ったのだろう。昨秋、メガネ業界の大手、キクチメガネ(本社・愛知県春日井市)に依頼。これを受け、担当者が調査、データを収集。その結果、ベストの選択肢として、1つのレンズにたどり着いた。普通のカラーレンズではなく、目の手術後など医療用に使用されてきた遮光レンズを一般向けに用いたもの。開発したのは、眼鏡レンズ専門メーカーの東海光学(本社・愛知県岡崎市)だ。
普通のカラーレンズはまぶしさは抑えられる。しかし全体的に視界が暗くなるのが難点。特に色の濃いレンズは、動いているボールを追う競技には不向き。その点、遮光レンズはまぶしさの原因となる光をカットし、黄色や緑色など明るさを感じるために必要な光はできるだけ取り込むことができる。キクチメガネの担当者・加藤一幸さんは「こういう形でプロスポーツに導入されるのは、おそらく初めてだと思います。打球が格段に見やすくなり、特に太陽光を見るときに威力を発揮してくれます」という。
レンズ色は19種類あり、フレームは中日の辻、奈良原両コーチ、巨人の原監督、オリックスの岡田監督ら球界にも愛用者の多いルディプロジェクト社製のものを採用。そのサンプルが23日、中日に届く。ナゴヤ球場の合同自主トレの合間に視力検査が行われる予定で、その結果を見ながら選手に合ったレンズを選び出すことになる。天候が良ければ、屋外で使用テストが行われるという。
昨年、実際に打球を見失った藤井は「すごく興味はあります。薄暮でも何とかなれば、本当に助かります」と大歓迎。平田も「少しでも見やすくなればいいですよね。良かったら使ってみたいです」と言う。本格的なテストは沖縄キャンプから。指揮官ご託宣のサングラスがうまくハマれば“マツダの恐怖”は少なからず軽減される。それ以外でも威力発揮となれば、レンズ越しに見るVの視界は良好のはずだ。 (鹿嶋直樹)
◆マツダスタジアムの逆光 マツダの設計は本塁が西側、中堅が東側にあるため、昼間の時間帯は外野手から見て、ほぼ正面に太陽が位置する設計になる。慣れないビジター球団はデーゲームで苦戦。中日は広島には昨季16勝8敗と勝ち越したが、マツダでのデーゲームは2勝2敗だった。
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