トップ > 中日スポーツ > 格闘技 > コラム・撃戦記一覧 > 記事
【コラム 撃戦記】『負けて引退』こそプロの哲学だ!!2010年1月23日 東洋太平洋ライト級王者だった長嶋建吾(34)=18古河=が今月16日、2度目の防衛に失敗し、引退した。高校、大学で国体3連覇。ジム経営の父親との“親子鷹”が注目された。02年8月、WBC世界スーパーフェザー級王座決定戦に臨み失敗。再起後もフットワークを駆使したサウスポーとあって世界のベルトが期待された。引退は残念だが、足掛け12年のプロ生活に悔いは感じられなかった。 ボクシングの専門誌「BOXING BEAT」1月号で、「チャンピオンの引退『決断の時』」として、ガッツ石松氏ら元世界王者15人が語っている。決断は体力の限界、目の負傷、気力の喪失などさまざまだが、一様に「チャンピオンは負けてやめるべきだ」が持論で、そこにプロ魂を感じた。輪島功一氏は「それが勝負の掟(おきて)だとおれは考えてたから」と厳しい。王者のままでの引退は、プロでは許されないという哲学なのだ。 一方で、無敗のまま引退した王者もいる。1897〜99年に活躍した世界バンタム級王者ジミー・バリー(米国)を筆頭に8人。WBA世界ストロー級王座を大橋秀行(ヨネクラ)から奪ったリカルド・ロペス(メキシコ)もその一人だ。タイの英雄カオサイ・ギャラクシー(タイ)もWBA世界スーパーフライ級王座を19度防衛、王者のまま引退した。ロペスもカオサイも金と名誉を手にぜいたくなリングの“幕引き”だった。惜しまれた引退の余韻は今も鮮明である。 (格闘技評論家)
|