小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件の捜査に関連して、民主党内に検察当局やメディアを批判し、けん制する動きが目立っている。
まずは常任幹事会で承認された「捜査情報漏えい問題対策チーム」の設置だ。検事や弁護士出身の衆参両院議員で構成し、検察から報道機関への情報リークが行われていないか、情報源についても調査するという。小沢氏が検察との対決姿勢を強める中、検察をけん制する狙いがありそうだ。平野博文官房長官も「あまりにも一方的に情報が媒体に出て、不公平感を感じる」と、情報漏えいの可能性を指摘して不快感を表明した。
しかし、メディアが取材源から得た情報を基に吟味した上で報道するのは、国民の知る権利に応える当然の使命である。報道への政治介入は民主主義の根幹に触れる危険な動きで、報道の自由という観点からも見過ごすことはできない。
原口一博総務相が記者会見で「『関係者(によると)』という報道では、検察と被疑者のどちらの関係者か分からない。公共の電波を使ってやるには不適だ」と発言した問題も波紋を広げた。
取材源はできるだけ明示すべきだろうが、隠さなければならない情報もある。報道機関にとって情報源を守ることは最も重要な倫理である。放送行政を担当する総務相が報道内容にまで踏み込む発言は慎むべきで、極めて不適切な発言だったと言わざるを得ない。
さらに検察を揺さぶろうとする動きがあった。輿石東参院議員会長(幹事長代行)は、容疑者取り調べの全過程で録音・録画を義務付ける刑事訴訟法改正案(可視化法案)の今国会提出をちらつかせた。
検察は取り調べの全面可視化は「真相解明に支障を来す」として反対の立場だ。民主党は衆院選の政権公約に取り調べ可視化で「冤罪(えんざい)を防止する」と明記していた。しかし、あまりにも性急な対応であり検察をけん制する思惑が透けて見える。鳩山由紀夫首相が提出に否定的な考えを示したのを踏まえ、輿石氏も慎重姿勢に転じたが、法案の必要性はなお強調している。
一連の言動に対して自民党からも「民主党の体質は非常に危険」との批判が相次いでいる。民主党がなすべきは、検察やメディアに圧力をかけることではなく、内部調査によって冷静に事実関係を解明し、自浄能力を発揮することではないのか。