米インターネット検索大手のグーグルがサイバー攻撃や政府の検閲を理由に中国からの撤退検討を表明した問題は、中国側が米人気映画の宣伝を禁じる通知を国内に出すなど広がりをみせている。米中間の新たな火種になる可能性もある。
グーグルは中国政府の関与が疑われるサイバー攻撃を受けたとし、また検閲を「これ以上受け入れ続けるつもりはない」として撤退を視野に中国事業を見直すとした。ギブズ米大統領報道官が「グーグルの行動を支持する」と述べるなど、米政府も歩調を合わせている。
グーグルは2006年、ある程度の検閲を覚悟で中国に進出した。ネット検索市場のシェアは現在約3割で、国内最大手を追撃している。企業としての思惑や駆け引きもあるはずでグーグルの主張をそのまま受け取るのは適当でなかろうが、今回の問題が表現の自由、言論の自由にかかわる重いテーマであることは確かだ。
中国は2000年にネット規制の原則を決めたとされ、政権や社会主義制度、国家統一に関するものを中心に年々規制を強めてきた。結局のところ、一党独裁の政治体制と市場原理導入経済の矛盾という本質論に行き着く問題であろう。
しかし、現実に中国は経済発展を遂げている。世界の工場を自他ともに認め、21日発表の09年国内総生産(GDP)は前年比8・7%増を記録、政府目標を達成した。米国に次ぐ経済大国の地位も間近である。経済の現実の一方で規制を強めることには批判が高まろう。
今回の問題が中国で活動する欧米情報技術(IT)企業に影響を及ぼすことも考えられる。中国が今後も経済を伸ばそうとするなら、規制を緩める方向に歩むのが筋であろう。