鳩山政権が掲げる「地域主権」の推進に向け、地方自治法の抜本改正の在り方などを協議する「地方行財政検討会議」の議論がスタートした。
会議は総務省が設置し、自治体の首長や有識者ら計18人で構成する。議長は原口一博総務相が務める。地方議会の改革などをテーマに意見を集約し、2011年の通常国会に地方自治法改正案の提出を目指す。
地域主権とは、これまで中央主導的だった国と地方の関係を根本的に変えるための基本理念である。従来の地方分権の概念より踏み込み、地域のことはそこに暮らす住民が主体的に責任を持って決めるという、新たな国づくりを意味する。
今年は具体化への元年といえる。今回の会議は、国と地方の在り方を見直す地域主権戦略会議などに続く推進組織で、地域主権の主役となる自治体の機能強化を目的にしている。
地方自治法は自治体の組織や運営などを具体的に規定する法律で、1947年に制定された。改正の主要テーマは地方議会の改革になるとみられる。方向性は妥当だろう。権限や財源などが地方に移譲されれば、地方議会の能力がこれまで以上に問われるからだ。
現状は無所属の首長を大半の議員が支える総与党化が目立ち、チェック機能の弱体化が指摘される。活性化策として、会社員や主婦ら多様な住民参加を促す方策が有力視される。
例えば会社員が議員になろうとした場合、休職・復職の仕組みが制度化されれば、立候補しやすくなる。1年間に開く定例議会の回数を条例で定める会期制を見直せば、毎週決まった日などに開催できるようになり、主婦らも積極的に名乗りを上げるかもしれない。
門戸が広がると選挙で競争が強まり、質の向上が期待できよう。有権者の選択肢も拡大する。柔軟な発想で幅広い住民の参加策を探ってもらいたい。
首長が、現職の議員を副知事や副市長など自治体幹部として起用できる案も議論される見通しだ。議員が政策立案に加わることで、行政監視の強化や議会での論争活性化が見込める。首長の過剰な権限拡大につながるとして慎重論もあるが、発想としては興味深い。
現行法が教育委員会などの設置を義務付けている規定は、自治体の自由な行政運営の阻害要因になっているといわれ、緩和策も協議される。自己責任を前提に、あらゆる面で地方の自立心を高める改革が望まれる。