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社説

政教分離判決/厳格な適用求めた最高裁 

 市の土地を地域の神社に無償で使わせているのは憲法の政教分離原則に反するかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁大法廷は「違憲」の判断を下した。

 公有地に神社や寺院などの関連施設があるところは多いとされる。国や自治体は原則の厳格な適用を迫られた形だ。

 問題の空知太(そらちぶと)神社は北海道砂川市の市有地にある。敷地内に町内会館が建設されて神社は会館に移ったが、一角に鳥居やほこらがあり、祭事なども行われてきた。

 判決は、市有地の提供で氏子集団の神社を利用した宗教的活動が容易になっていると指摘。「市が特定の宗教に便益を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない」と述べ、「会館なので宗教性はない」とする市側の主張を退けている。

 14人の裁判官のうち違憲判断は9人で、1人の裁判官が合憲とした。

 注目されるのは、過去の同種の訴訟にはない新たな判断基準を示したことだ。

 違憲かどうかを判断するのに、最高裁は津地鎮祭訴訟(1977年)で「目的が宗教的意義を持ち、宗教に対する援助や圧迫などの効果があるか」という基準を示している。「目的効果基準」と呼ばれ、これまでの訴訟で踏襲されてきた。

 判決では、無償提供の経緯や一般人の評価、社会的通念などから総合的に判断すべきとしている。神社は明治の開拓期につくられ、百数十年にわたって地元の人がなじんできた。実態に即した判断には、従来とは違う物差しが必要だったのだろう。

 最高裁が政教分離原則違反について審査した11件のうち違憲としたのは1件で、目的効果基準のあいまいさへの批判も絶えない。今回、より幅広い視点で明確に違憲とした判決の意義は大きいといえる。

 もっとも、判決が神社の撤去や土地明け渡しを求めているわけではない。違憲状態の現実的な解消策はあり得るなどとして、審理を高裁に差し戻した。総じて、おおかたが納得できる結論ではないか。

 空知太神社と同様のケースがある地域では、戸惑いはあるだろう。暮らしに結びついた習俗的な存在というところも多いはずだ。判決は運用実態からも判断しており、無用の混乱は起きないとの見方もあるが、まずは各自治体で実態をつかむことだ。

 憲法の政教分離原則は、旧憲法下で国家神道と国家権力が結びついた過去の反省から確立されたものである。今回の違憲判決を、原点を再確認する機会にしたい。

(2010/01/22 09:50)

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