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2010年01月23日暖冬一変に混乱 雪国の心構え忘れずに 

 「暖冬」の触れ込みもあってか、年末と先日来の大雪に県内は少なからず混乱した。北陸では記録的とまではいえない降雪量だが、近年の暖冬傾向に気持ちが鈍っていなかったか。「雪があって当然」という心構えと対応が市民、行政ともに必要だ。
 13日からの寒波で奥越では「平成18年豪雪」以来の大雪となり、大野市九頭竜で204センチ、同市街地で128センチを記録した。同市の雪害対策本部設置基準(150センチ)に迫り、対策連絡室を4年ぶりに設置した。
 44センチの積雪があった福井市では道路除雪が出遅れた。河川敷の雪捨て場の開設が遅れたのが一因で、各所で車が立ち往生し渋滞した。教訓としたい。
 短期間の集中降雪に対し、すべての道路交通を確保するのは困難だ。そのために各自治体は除雪計画で重点路線を設けている。拠点病院のアクセス道やバス路線はもちろん、朝夕の通行時間帯に交通機能がまひすると市民生活、経済活動に重大な支障をきたす。行政には迅速で効率的な対応が求められる。
 一方、市民側、ドライバーや通行者も譲り合いの精神を忘れないでほしい。除雪や融雪で不快な思いは誰しも経験するが、少々のことは「雪国だから」と容認する心が、要らぬトラブルの回避につながる。
 大野市では今冬、除雪中の事故で15人が負傷した。うち13人が屋根雪下ろし中の転落だ。勝山市では1人が死亡し、4人がけがをしている。県危機対策・防災課によると、県全体で23人が死傷しており、人的被害は奥越に集中している。
 平成18年豪雪で県内の死者は14人、重軽傷者は162人に上った。忘れたころにやってくる近年の大雪に「昔取ったきねづか」は危ない。体力の低下、記憶の薄れもある。命綱やヘルメットの装着、水分補給、1人で作業しないなど注意が必要だ。
 拡幅除雪の置き土産で、交差点の角には雪の山が残る。脇道から左右が見通せず危険な状態にある。幅員を確保した次の段階は、曲がり角や歩道の除雪を住民も協力して進めたい。
 集中的な降雪は道路除雪費にもダメージを与える。この数年、8500万円前後の除雪委託費を使っていた大野市は、当初予算に1億円を計上し、12月末にほぼ使い切った。さらに1億5千万円ほど必要とみており、補正で追加していくしかない。
 暖冬と景気の低迷で、除雪費は年々削減傾向にある。ひとたび大雪になると雪国の自治体はやりくりに苦心する。国・県道と違い市道には国の除雪補助がない。本年度は経済対策費の一部を使えそうだが、臨時的ではなく、恒常的に国の支援を受ける仕組みが望まれる。
 今冬のように一転して気温が上昇すると、雪崩の危険性も増す。危険個所のチェックと早めの除排雪が必要だ。
 雪はマイナス面だけではない。県内の各スキー場は活気づき、雪解け水は春の田んぼを潤す。坂井市の「たけだじょんころ雪まつり」は今年が最後だが、大野市の「越前おおの冬物語」など親雪・利雪イベントも多い。雪と上手に付き合ってきた県民性を忘れないでいたい。

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