消費者庁の目玉事業の一つである「消費者ホットライン」がスタートした。全国共通の電話番号に掛ければ、最寄りの自治体などの相談窓口につながる。県内15市町村のうち、富山、高岡両市など8市町でホットラインから電話を受け付けているが、7市町村ではまだ相談体制が整わないといった理由で、電話を県消費生活センターに回している。住民の利便性を高め、消費生活上のトラブルに迅速に対処、解決するためには各自治体ごとに身近な相談窓口を充実させることが欠かせない。
ホットラインは悪質商法による被害や訪問・通信販売での業者とのトラブル、産地偽装などの食品表示について相談を一元的に受け付け、番号は「0570-064-370」。音声案内に従って、相談者が住む地域の郵便番号などを入力すると、近くの市町村の相談窓口などにつながる。
全国共通の番号を導入したのは、消費生活に関する相談窓口があること自体知らなかったり、これまで相談しようかどうしようかと迷ったりしていたことを無くし、敷居を低くするためだ。最寄りの自治体の窓口につながれば利用しやすく、助言やあっせんを受けることで早期解決に結びつく。直接窓口に出向いて契約書を見ながらの相談もできるだろう。
だが、黒部市など7市町村では「資格を持つ職員がおらず、現状では専門的な相談に応じられない」などの理由で、県消費者生活センターに対応を任せている。
県では昨年春、消費者行政に力を入れるため、県民生活課に消費生活班を立ち上げた。7月には、地方の相談窓口を充実させるための消費者行政活性化基金を用い、弁護士を招いて消費生活相談員の資格取得のための集中講義を開いている。
資格は国民生活センターの試験に合格すれば取得でき、こうした県の働きかけに応じ、各自治体の職員が資格に挑むなど積極的な動きがみられる。7市町村はできるだけ早く、ホットラインから対応できるようにしたいと前向きだ。消費生活相談の専門家がいることは住民、自治体双方にとって心強いはずだ。国もさらに人員面での充実に向けた支援が必要だろう。
これまでの消費者行政は生産者や事業者側にスタンスを置いてきた。そのため、消費者を守ることが後回しになり、犠牲者が出ることも多かった。一例ではお菓子のこんにゃくゼリーの事件がある。一昨年、1歳の男の子がのどにつまらせて亡くなった。3年前にも7歳児が死亡しており、平成7年から全国で多数の人が亡くなっている。問題を把握しながら農林水産省も厚生労働省も縦割り行政の弊害で、それぞれ管轄外としてきた。そうした反省に立って、昨年発足したのが消費者庁である。
消費者庁は消費者を守ることを第一に素早く対策をとることを狙っている。相談の窓口が多くなればトラブルを回避できたり、相談者の情報がきっかけで、他の人が被害に遭うのを防ぐことにもなろう。危険な食品や産地偽装などの販売にも対処できる。ホットラインシステムの充実は消費者の暮らしに大いに役立つはずだ。