昇り竜の勢い、というところだろうか。
中国経済は2009年も高い成長を遂げ、国内総生産(GDP)の総額は日本に迫る水準になった。米国に次いで世界第2位の「経済大国」に躍り出る日は近い。
13億人の巨大市場は、世界経済のけん引役として一段と期待されるだろう。
だが、国内的には、貧富の格差や民族問題といった頭の痛い課題を抱えている。社会の安定のためには、成長を維持しながら富を適切に配分していく必要がある。中国政府には、引き続き難しいかじ取りが迫られる。
中国国家統計局によると、09年のGDPは前年比8・7%増となり、目標の「8%」を達成した。GDP総額は円換算で約450兆円。08年の日本の約505兆円に、ぐっと近づいた。
隣国の成長は、日本にとっても歓迎すべきことだ。日本はそのエネルギーを取り込みつつ、自らの成長を目指す戦略がますます大事になる。ここを見据えた中国外交を、鳩山政権に期待したい。
中国経済には注意すべき点が少なくない。確かに、景気は09年の1〜3月期を底にV字型の回復をみせている。けれども、回復の大きな要因は、巨額の公共事業や減税など50兆円を超える大規模な景気刺激策にある。
都市部で不動産バブルが問題になるなど、副作用が心配されている。雇用を安定させて消費を促し、力強い内需主導の経済に変えていかなれば、息の長い成長にはつながらないだろう。
格差問題も重くのしかかっている。農村住民の1人当たりの年収は、都市住民の3分の1以下とのデータがある。農業や農村政策を強めて、生活の底上げを図ることが急務だ。
最近は、大学を卒業しても安定した職業に就けない「蟻族」と呼ばれる若者たちも話題になっている。ホワイトカラーを希望する層が過剰気味になっているようだ。全国で数百万人に上るとの説もあり、軽視できない。
成長の果実を生かして、さまざまな格差を縮めていく−。これが中国政府に求められる課題である。民族問題も抱えるだけに、経済・財政政策の手綱さばきを誤るわけにはいかない。
高い成長を背景に、中国は近年、国際的な影響力を一段と強めている。いつまでも「途上国」の顔をしていることは許されない。温暖化対策など国際的な取り組みに責任ある行動を求めたい。