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外国人地方選挙権 法案の提出はまだ先だ |
2010/01/23(土) 本紙朝刊 総合2面 A版 2頁 |
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日本に永住する外国籍の人たちに自治体の首長、議会選挙に参加する権利を認める外国人地方選挙権付与法案(仮称)をめぐる論議が政府、各政党に広がっている。外国人地方選挙権に対する関心は過去にも高まったことがあるが、これまでと異なるのは、国会に法案が提出されれば、そのまま成立する可能性が高いことだ。
結党以来、外国人地方選挙権の早期実現を掲げてきた民主党が政権を獲得、鳩山由紀夫首相は政府が法案を提出する意向を示している。
しかし、外国人地方選挙権については社民党は賛成だが、国民新党は否定的。与党三党も一枚岩とは言えない。肝心の民主党内にも慎重論が根強い。
閣内でも異論が相次いでいる。原口一博が記者会見で「政府が数を頼りに民主主義の土俵をつくるのは慎重であるべきだ」とし、議員提案が望ましいという考えを示した。千葉景子法相も「政権とは別に社会全体で議論を展開するのが適切だ」と慎重な見方を示し、仙谷由人国家戦略・行政刷新担当相も「もう少しじっくり考えないといけない点もある」と拙速な法案提出には疑問を投げかけている。
在日韓国・朝鮮の人たちを含め、歴史的経緯から永住権を認められた特別永住者は42万人。このほか、日本人の配偶者などで、出入国管理法などに基づき法務大臣から永住を許可された一般永住者は49万人を超え、その数は年々増加している。一般永住者には中国籍の人が多いと言われる。
こうした永住外国人は、確かに地域住民として地域の日本人と何ら変わらない生活を営んでいる。欧州各国などでは外国人に国政、地方選挙の投票や立候補に関し何らかの権利を付与する動きが広がっている、ともいわれる。永住者を含めた外国籍の人たちとの共生は、グローバル化の中で日本が避けて通れない課題であるとも思う。
ただ、永住外国人への参政権付与は単純な問題ではない。付与そのものが憲法違反との指摘もある。国の主権を脅かしかねないと危(き)惧(ぐ)の声も根強い。
この問題で直接的な影響を受ける肝心の地方自治体も、鳩山首相らの拙速な動きには警戒を隠せないでいる。自治体の首長らの間には付与そのものに反対する意見が相次いでおり、全国都道府県議会議長会は先ごろ地方の意見を十分聞くよう求める特別決議も採択している。
この問題を複雑にしているのは、民主党の小沢一郎幹事長が付与法案の政府提出の旗振り役になっていることだ。背景には、夏の参院選をにらんだ政党間の駆け引きという見方がある。外国人地方選挙権の付与に自民党は反対に傾いているが、公明党は賛成に回るため、野党を分断できるという思惑があるとされる。
しかし、これだけ重大な法案を十分な議論を踏まえないまま、小沢幹事長らの選挙への思惑絡みで数の力で成立させてしまっていいのか。ましてや、法案の国会提出後、法案採決で党議拘束をかけ、党内の反対・慎重論を封じるようなまねは許されない。鳩山首相は与党内での徹底した議論を求めるべきだ。この問題について、国民の関心は必ずしも高くない。本当の議論はこれからだ。法案提出は、多様な意見を聞きながら論議を尽くしてからでも遅くない。
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