2010年1月22日(金) 東奥日報 社説



■ 県病と県は再整備を急げ/「呼吸器内科」休診へ

 県立中央病院(青森市)が3月までに呼吸器内科を段階的に休診する。ただ一人の常勤医師(59)が3月いっぱいで退職することになったためという。

 高齢化社会の進展で、肺を中心に呼吸器疾患は増加を続け、呼吸器科医の重要性と役割が増している中で、本県の中核的な総合病院である県病で休診となることは、極めて異例だ。

 呼吸器内科の空洞化は医師不足の波が県病にまで及んだことも意味している。

 呼吸器内科は2008年7月から、それまでの常勤医師2人から1人となった。週3日の外来で、患者は月約500人。これに加え、常に満床に近い状態になっている入院患者や結核病棟の患者に対応してきた。20年以上勤務してきた医師だが、1人となった1年半ほどは厳しい労働環境にあったことが推察される。

 呼吸器内科が休診となることで、ぜんそくや肺炎、老人性肺気腫、長期間、気管が閉塞(へいそく)状態となるCOPD(慢性閉塞肺疾患)、肺がんなどの多くの患者に影響が出る。結核患者は指定医療機関の国立病院機構青森病院に受け入れを打診する方向だ。

 県病と設置者の県には、休診という事態を打開し、体制の再整備を急ぐよう、全力を挙げることを求めたい。患者や県民の安心と信頼確保のために、である。 この約2年で後任体制を整えられなかったことは、結果として、基幹病院の責任を果たしたことにはならない。

 県病によれば、呼吸器内科は長い間、基本的に東北大学医学部(仙台市)から医師の紹介を受けてきた。だが、医師不足からも今後の医師確保の道筋は厳しい情勢という。

 日本専門医制評価・認定機構(08年3月現在)によれば、全国の専門医数は消化器内科の1万4657人、循環器1万354人に対し、呼吸器は3580人にとどまる。呼吸器内科は少なく、県内でも同様だ。

 既にスタッフの公募を進めてきた県病だが、自己完結型の呼吸器診療・治療を早期に実現する必要がある。ただ他方、県病からすれば仮に医師を確保できたとしても1人なら、立ちゆかなくなる。難題である。

 一方、県病には呼吸器外科の常勤医3人が配置されている。がん拠点病院として、がん対応のスタッフもそろっており、重症化した肺疾患や高度な手術、合併症など病状に応じ、これまで通り対処できるという。

 が、現実には多くの患者が、内科の行う肺がん治療(抗がん剤投与・化学療法)を受けている。呼吸器疾患診断と発見の入り口も一般には内科だ。内科が大事な役割を担うゆえんだ。

 県病事業管理者の吉田茂昭院長は「医師探しに全力を挙げるが、確保できなければ内科を青森市民病院などに分担していただき、連携も考える必要がある」と語る。現在の外来患者や入院患者30人が不利益とならないよう、転院先確保を含め対策を進めている。

 呼吸器診療の地域格差の解消や医療の均等化は国レベルの課題で、呼吸器科医や専門医の育成は急務だ。 休診に追い込まれた県病は県民の信頼に応えるために、この事態を乗り越えなければならない。


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