社説

新型インフル/流行は収まってきたけれど

 新型インフルエンザの国内の流行が収まりつつある。そんな中、ワクチンの優先接種対象外だった健康な成人への接種が各自治体でようやく始まった。輸入ワクチンが大量に余ることも予想されており、苦い教訓を残すこととなりそうだ。

 国立感染症研究所の報告によると、昨年11月の第4週をピークに患者数の減少が続いている。宮城県の場合を見ても、1月第2週は1医療機関当たりの患者数が3.8人。昨年9月ごろのレベルまで戻った。

 このまま、流行は終わるとみていいのだろうか。世界保健機関(WHO)は「北半球の一部では、最悪期は脱したかもしれない」(チャン事務局長)と、終息に向けたサインを出す一方、「通常のインフルエンザのピークが過ぎる4月までは、結論は出せない」と慎重な姿勢も見せる。

 一年で一番寒く、空気が乾燥しているこの時季は、例年なら流行が最盛期に向かう途上だ。その季節性インフルは今季、ほとんど流行していない。

 新型の出現で、従来のウイルスが淘(とう)汰(た)されたことが過去にはあるが、いずれにせよ未解明の領域だ。多くの専門家が指摘するように2波、3波の襲来はもちろん、季節性インフルの盛り返しがないとは言えない。

 今も、週に約50万人の新型インフル患者が出ている現実を考えれば警戒は緩められない。うがい、手洗いなどの日々の予防が引き続き必要だ。

 半年間は有効とされるワクチン接種の意味も小さくはない。しかし、優先接種者から外されて、最後の最後に「残り物」を分け与えられる格好になった多くの国民からすれば、釈然としない思いも強いだろう。

 ワクチン接種に関する今回の一連の国の対応は、円滑だったとはとても言えない。

 国内の需要に対する供給量が追いつかないとみて、国は医療従事者、妊婦、持病がある人などを優先したが、それは2回接種を想定したからだった。昨秋の接種開始を前に「1回で十分」「科学的根拠がない」などと厚生労働省内の意見対立が表面化し、方針が二転三転した。

 急いで製造された当初のワクチンは20人分程度の大瓶入りだったため「一度に使い切らないと無駄になる」と医療現場から不評を買い、国は途中で小瓶入りに切り替えたりもした。

 結果として、接種希望者が殺到した11月半ばごろは、供給量が不足。流行ピークを挟んで希望者が急速に減っていくころから在庫が積み上がった形だ。

 この上に、契約を結んでいた海外からの輸入分(9900万回分)が乗る。長妻昭厚労相は「解約できるか検討している」と言う。国は、国内メーカーの育成を含め、ワクチン政策を早急に練り直すべきだ。

 致死率は低いとはいえ、国内の死者は160人を超えた。ワクチン対策だけではない。相談窓口のあり方や自治体と医療機関との連携、幼児の重症化を防ぐ即応態勢など、流行がひとまず収まってきたこの時にこそ、考えておくべき大事なことは多い。

2010年01月23日土曜日

Ads by Google

△先頭に戻る

新着情報
»一覧
特集
»一覧
  • 47NEWS
  • 47CULB