苦い思い出があります。
テレビ出演に関して、です。



今まで書いたことはなかったのだけれど、…
ちょっとだけ、書いてみたくなりました。




私たち家族は、
これまで、けっこうテレビに出させていただきました。


メジャーなところでは、

ドキュメント 02
徳光和夫さんの情報スピリッツに2回。
クイズミリオネア(獲得賞金は0円でしたけど笑)。
ぐるぐるナインティナイン。
笑っていいとも。
24時間テレビ。
スマップ・稲垣くんの、忘れ文。
ズームインスーパーに、7~8回。
スーパーテレビ情報最前線
NHKの「一期一会」… などなどなど♪

そのほか、単発の番組に10回くらい出たでしょうか。


地元くまもと県民テレビには、
シリーズで、40回くらい出させていただきました。

私が個人で出演したものも入れれば、他にもたくさんあります。


「特集」には出ないのですか?と、よく尋ねられます。
90分スペシャルとか、2時間スペシャル、とか、
岸さん一家だけを紹介する番組には出ないのですか?と。

出ません。




理由があります。

以前、…もう随分前ですが、
大手テレビ局から、半年間の密着取材で、90分番組をつくりたい、という申し出がありました。

東京からディレクターさんたちがお見えになって、
とても熱心に出演を依頼をしてくださったので、承諾することにしました。


密着取材が始まりました。

…でも、半年ではなく、3週間だけ。



途中でお断りしたからです。



あまりにも、やらせ、というか、…
自分を曲げないといけないことが多すぎて、
普段しないようなことを求められることが多すぎて、
演出があまりにも多すぎて、

とても ついていけそうになかったので、…途中でお断りさせていただきました。



もうこりごりだ、…と思いました。
本当にいやな思いを、とても沢山したからです。


地元のテレビ取材に関しては、もう数年来のおつきあいなので、気心も知れていますし、無理な要求なども一切ないのですが、
中央のテレビは、とても無理だ…と、思いました。

だから、
番組の中の、ひとつのコーナーの中で10分前後くらい、という
軽いものだけを、楽しんで受けることにしてきたのです。


その後も、いろんなテレビ局から、
何度か、スペシャルのお話もあったのですが、全部お断りしてきました。




そうこうしているとき、
今度は、別の取材の申し出がありました。

「世界びっくり人間」、とかいう番組で、
世界のびっくり人間、と呼ばれる人たち(世界一背の高い人、とか、とても小さい人とか、すごく太っている人、とか、)が、日本の家庭に数日間ホームステイして、異文化を楽しむ、というもの。


東京からまたディレクターさんたちがわが家にお見えになって、
熱心で丁寧な説明がありました。


うちに来るのは、中国雑技団の16歳の女の子。
一人っ子で、5歳から親元を離れての寮生活なので、
大家族体験をさせたい、とのこと。

少し興味がありました。


わが家は、これまで、海外の学生さんたちを、ホームステイとして受け入れたことが7回くらいあるので、そんな感じで受け入れられるかな、と思ったからです。

子どもたちも、「楽しそう!」と、言ってくれたので、
お話を受けることにしました。



1カ月後。

リー・ナンちゃん、という雑技団の女の子が、わが家にやってきました。
レポーターは、福田沙紀ちゃん。


うちの子どもたちはみな大歓迎でした。


それからの数日間。
私たちは、とても楽しくすごしました。

中国語の話せない私たち家族は、
事前に、中国語のカードや、絵を沢山準備しておいて、
彼女とのコミュニケーションをはかりました。

リー・ナンちゃんは、よく笑い、子どもたちとすっかり仲良くなりました。

一緒に、娘の高校へ行って、授業を体験したり、
阿蘇の山へ行ったり、
猿回しの舞台を見て、笑い転げたり、
一緒に料理を作ったり、遊んだり。


密着取材、といっても、夜、寝るときには、
取材スタッフは、近くのホテルに泊まり、
うちに泊まっていたのは、リー・ナンちゃんだけでした。

だから、カメラのない夜は、
りー・ナンちゃんも、緊張から解放されて、うちの子どもたちと遊びます。

リー・ナンちゃんは、可愛くて、
うちの子どもたちもみな、彼女が大好きになりました。


明日でホームステイが終わる、という夜、
リー・ナンちゃんは、「帰りたくない」と言いました。

私たちは、絵でコミュニケーションをとっていたのですが、
彼女は、中国の寮の絵を描いて、それに×印をつけ、それから日本のわが家の絵を描いて、それに○印をつけ、その○を、いくつもいくつも書いて、さらに♡マークを書きました。
それから、娘たちと抱き合って、涙を浮かべ、別れを惜しんでいました。


そして、撮影最終日、
無事に全ての撮影を終えて、スタッフの人たちは帰って行きました。



彼らが帰ったあと、忘れ物がみつかりました。
スタッフの人の忘れものです。
台本でした。


そこに書かれたものを読んだ時、少なからず驚きました。

撮影スケジュールがぎっしりと書かれていたのですが、
そこには、
「けんかするこどもたち」とか、「喧嘩する子どもたちを一喝する母親」とか、
「一人孤立するリ・ナンちゃん」とかいう書き込みがあります。

え???????


リー・ナンちゃんは、毎日日記をつけることになっていて、その内容もすでに書いてあります。



え???????


どういうことかわからなかったのですが、
あぁ、こういうふうに撮ろうと思ってた、ってことかな?…でも、実際はそうならなかったよね…。

と、思いつつ、…なんだかいやな感じがしました。


でも、
スタッフの人たちはみんないい人だったのです。

とってもフレンドリーで、
大家族のいいところをぜひ引き出したい、とか、
大家族と過ごせて、リーナンちゃんも楽しそうですよ!と言いながら、笑顔で撮影を続けていたのです。

心配いらないよね、と、思いなおし、
でもその台本は、内容がすごくいやだったので、
子どもたちに見せたくなくて、ゴミ箱に捨てました。


やがて、
放送日がやってきました。


私たち家族は、楽しみにその時間を待っていました。

いよいよりー・ナンちゃんの出番です!



映し出されるわが家。
リー・ナンちゃん。
うちの家族。



放送が進むにつれて、子どもたちの表情がこわばってきました。

「お母さん!ぼく、こんなこと、してないよ!!」
「おかあさん!これ、ちがうよ!!」
「おかあさん、これ、ひどい!!!」

私も、…
震えそうになりました。

こんなことって、
…こんなことって、あるの?

こんなこと、
してもいいの??????


そこには、事実と全く違うことが、平然と流れていたからです。


たとえば…、


“リー・ナンちゃんは、言葉が全く通じず、うるさい大家族のところへいきなりやってきて、面喰ってしまった” というところから番組は始まります。

え?一日目から、楽しそうだったけど?…


“朝、柔軟体操をするリー・ナンちゃん。
ところが、それに気づいた子どもたちがすぐにやってきて、彼女はちっとも集中できません”  …そんな場面が続きます。


え??
えぇっ????

事実はこうです。


朝から柔軟体操を始めたりー・ナンちゃんのところへ、
うちの子どもたちは誰も近づきませんでした。
邪魔してはいけない、と思ったからです。

ところが、スタッフの人たちが子どもたちに言いました。
「せっかく練習してるのに、見ないの?」と。

子どもたちは、私のところへ尋ねにきました。
「見てもいい?」

私は、「邪魔にならないように、離れて、静かに見なさいね」と、言って、許可しました。

子どもたちが言うには、離れて見ていたら、スタッフの人から、
もっと近くで見るように、と促されたので、近づいたのだ、とのこと。


さらに、画面では、
連習しているリー・ナンちゃんを、ケータイでバシバシ撮影している長男が映し出されます。にやにや笑いながら、まるで隠し撮りでもするように。
ナレーションは、リー・ナンちゃんが困っていることを伝えています。


でも、長男の名誉のために言いますが、
長男は、決して、断りもなく、人を撮影したりしません。
スタッフの人から、せっかくだから写真を撮ったら?と、促されたので、
少し離れて、控えめに撮ったのです。
リー・ナンちゃんも、笑顔でした。



さらに、画面は、
言葉が通じなくて、イライラするりー・ナンちゃん。
こんなうるさい大家族はいやだ、と、苦しむりー・ナンちゃんが映し出されます。


もう、言葉を失ってしまいました。


娘の学校へ一緒に行って、お友達と笑い転げているりー・ナンちゃんは?
一緒に楽しく遊んでいるリー・ナンちゃんは??

全部、カットされていました。



画面では、数日たったところで、
リー・ナンちゃんが初めて笑った!!との、ナレーションが流れます。


一斉に子どもたちが言いました。
「一日目から笑ってたのに!」


もう、数え切れないほどの、事実とは異なることが、
平然と、
平然と、
まるで、それが本当のことのように流れて行きます。


子どもたちの喧嘩のシーン。
「おかあさん!あれ、スタッフの人が、わざとドアを開けないようにしたのに、それをひゅうちゃんがした、ってうそついたんだよ!」
ここは、こうだ!
これは、違う!
子どもたちの抗議が続きます。



…私はあの台本を思い出しました。


初めから、決まってたんだ…



リー・ナンちゃんが、
生まれて初めて大家族の家に行って、
うるさいうるさい子どもたちに囲まれ、邪魔をされて練習もできず、
言葉も全く通じず、コミュニケーションもとれず、
本当に大変な思いをしたけれど、
日を重ねるにつれて、やっと、心が通うようになり、
最終日には、涙の別れ…。 と。





画面では、涙の別れのシーンが流れています。

ほんとの涙だったのに。
私たちは、本当に、リー・ナンちゃんが、少しでも楽しく過ごせるように、と、精一杯のことをしたのに…。
別れが辛くて、本当にみんなで泣いたのに、

その涙さえ演出に見えてしまうような、…心が苦しくなるような番組でした。


私たち家族は、ひどいショックをうけました。
娘たちは、「ひどいよ、これ、ひどすぎるよ、うそばっかりだもん…」と、涙を流していました。




「こんな番組、誰にも見てほしくない!」
「明日、学校に行きたくない!」 と、子どもたちは言いました。

でも、
ゴールデンタイムにあった2時間スペシャル。

きっと沢山の人たちが観たことでしょう。

私たちにはどうすることもできないのです。…




翌日、
学校から帰ってきた子どもたちが、口々に言いました。
「あのね、昨日の番組見て、感動したんだって!」

友達の多くが、その番組を見ており、感動したのだ、とか。


複雑な気分でした。

つまり、演出は大成功、ということでしょうか。

その番組は、
一人っ子のリー・ナンちゃんが、はるか異国の地にやってきて、
うるさい大家族にもまれながら、必死でコミュニケーションをはかり、
やがて心を通わせ、涙で別れる、という、ディレクターさんの思惑通りの番組に仕上がり、人々に感動を与えていた、というわけです。


でも…
そのために使われた私たち家族の映像は、
事実とはあまりにも違っていました。



その時に痛感したこと。
それは、演出は、初めから決まっている、という事実でした。


演出家は撮りたいように撮るんだ…と、強烈に学習しました。





なぜ、
この長い長い日記を書いたのか、というと…


昨晩、マイケルの特別番組を見ていた時、番組の中で、全く同じ言葉が出てきたからです。


人々から誤解され、反感を受け、ひどいバッシングを受けていたマイケルに、イギリス人ジャーナリストのマーティン・バジールが、声をかけます。

「あなたのドキュメンタリーを撮りたいんです。あなたの真実を伝えたい」と。

マイケルは、彼を信じ、8か月に及ぶ密着取材に応じます。



やがて、放送された番組は、
マイケルの思いとは全く異なるものでした。
マイケルは、奇人として扱われ、その言動は、ひどくおかしなものとして紹介されます。

「演出は、初めから決まっていたのです」 と、ナレーションが伝えます。





メディアは、怖いです。

一旦流されると、それは、本当のこと、として伝わります。
実際はそうじゃないんです!と、いったい どうやって反論することができるでしょう?



私も、
マイケルの数千分の一にも満たないだろうけれど、誤解を受けることがあります。
私のことを、間違って紹介されたり、
歪められて伝えられたりすることがあります。

言ったこともないようなことを、言った、と言われたり、
やったこともないようなことを、やった、と言われたり、
思ったこともないようなことを、思っている、と言われたり、…

そんなとき、絶望的な気分になることがあります。


どうしようもないからです。



一旦流れた情報、うわさは、一人歩きして、
とても私の手には負えなくなります。

それを払しょくすることは、とてもとても難しいです。




私の場合…

自分の思いを、自分の言葉で発信する場所があるのは、本当に幸せなことです。
こういう文章だったり、講演だったり。




マイケルの場合は、それが歌だったんだろうな…。

彼の、メッセージ性のある歌詞を読むとき、そう感じます。



マイケルに、歌を作る、という手段があったことが、本当に嬉しいです。



「マイケルが人にお金を払えば払うほど、人は、マイケルに正しく接しなくなるんだ」 という父ジョセフの言葉。

「マイケルは、とても優しく寛大な人間であるがゆえに、ターゲットにされたのです。世界中の人々が、彼に近づきたがり、彼から何かを得ようとしました。お金、名声、作品、仕事、…何から何まで欲しがりました」
という、弁護士トーマス・メゼロウの言葉。



その言葉を聞きながら、
私はマイケルが可哀想でたまりませんでした。


自分の周りの人たちが、友達なのか、金目当てなのか、
…そんなことを考えなくてはならないなんて…あまりにも気の毒です…







と、書いているうちに、
あらあら、めっちゃ長くなりましたねぇ…(^_^;)




もしも、こんな長い日記を、忍耐強く最後まで読んでくださった方があるのなら、…どうもありがとう<(_ _)>




なんか…
思いを吐き出せてよかったです。




ありがとう。