きょうの社説 2010年1月23日

◎新幹線の8者会合 共通目標の実現へ気緩めず
 北陸新幹線長野―金沢(白山総合車両基地)の沿線4県知事や国土交通省など関係8者 が会合を開き、共通の目標である「2014年度の金沢開業」に向けて着実に前進する方針を再確認したことを歓迎したい。特に昨年の「新潟の乱」の主役だった泉田裕彦新潟県知事が、石川、富山、長野の各県知事と並んで会合に臨んだ意味は小さくない。今後も気を緩めずに、新潟県とほかの3県の間に生じた溝を埋める努力を重ねていきたい。

 一連の「乱」で、泉田知事が国交省などに突きつけていた要求の中には、3県も共感で きる部分が少なからずあった。新幹線建設費の地元負担金の軽減や建設コストの圧縮、並行在来線対策などがそうだ。にもかかわらず、3県と新潟県の足並みがそろわなかったのは、同知事が、負担金の支払い拒否など「開業遅れも辞さず」と言わんばかりの交渉手法をとったからにほかならない。

 関係8者の会合では、泉田知事が問題提起した点などについて協議する事務レベルの専 門部会を設けることも申し合わせた。同知事には、これから部会を通じて穏当に自説を主張することを求めておきたい。再び強硬手段に打って出れば、また孤立に逆戻りすることになるだろう。

 ただ、国交省に負担金の軽減を認めさせるのも、並行在来線対策でJRから譲歩を引き 出すのも決して簡単なことではない。実際、関係8者の会合でも早速、国交省やJRから「牽制球」が投げられた。とりわけ、民間企業のJRが利益を損ないかねない要望をすんなり受け入れてくれるとは思えず、議論の難航も予想される。3県は、強烈な個性の持ち主である泉田知事のペースに惑わされず、共同歩調の維持に努めたい。

 昨年の「乱」があれだけエスカレートしたのは、新潟県と3県の普段の意思疎通が十分 でなかったことも一因だろう。個別課題の論議は専門部会に任せておいてもよいが、それとは別に、共通の目標の実現をより確かなものにしていくために、知事同士が意見交換する機会を定期的に設けることも求めたい。

◎不起訴希望発言 首相としての自覚足りぬ
 民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る収支報告書虚偽記 入事件で逮捕された石川知裕容疑者に関して、鳩山由紀夫首相が「起訴されないことを望みたい」と語った発言を撤回した。検察への圧力と受け取られかねない不穏当な発言であり、検察も含めた行政の長としての自覚に欠ける。偽装献金問題で首相自身も批判を浴びるなか、危機管理の意識の乏しさ、言葉の「軽さ」に暗たんたる思いがする。

 鳩山首相は、検察との対決を表明した小沢幹事長に「戦って下さい」と発言し、批判を 浴びたばかりである。野党時代には、検察の捜査を「国策捜査」と批判したこともあった。自分で自分の首を絞めるような不用意な発言を繰り返さぬよう、自身の立場をしっかりとわきまえてほしい。

 多くの国民の期待を背負って船出した鳩山政権は、普天間飛行場移設問題の迷走や「政 治とカネ」の問題などもあって、好意的な見方が徐々にしぼみ、内閣支持率が急落している。自民党政権であれば、内閣はとっくに倒れていただろう。鳩山政権が命脈を保っていられるのは、国民の期待値が少なからず残っているからだろうが、「貯金」は確実に減っている。

 民主党内には小沢幹事長への過剰な遠慮があり、言いたいことも自由に言えない空気に 満ちている。永田町に新風を吹き込むはずの新人は一様にだんまりを決め込み、閣僚や与党幹部からも小沢幹事長への苦言はほとんど聞かれない。フラストレーションがたまっているせいか、「検察がマスコミに情報をタレ流している」「内閣支持率が落ちたのは報道のせい」など、八つ当たり気味の批判も相次いでいる。野党時代のクセが抜け切れていないのか、政府や与党の責任ある立場にある者の発言とは、とても思えない。

 自民党政権のころは、大きなスキャンダルがあったとしても、政府・与党が正面切って 検察や報道機関を批判することはほとんどなかった。党挙げて小沢幹事長を擁護すればするほど、国民の心は民主党から離れていくだろう。